フジタジュンコ

ボンベイのフジタジュンコのレビュー・感想・評価

ボンベイ(1995年製作の映画)
3.9
さすが名匠マニ・ラトラム監督。めちゃくちゃ映画うまおです。インターバルの入りも完璧すぎる。

前半はヒンドゥー教徒とイスラム教徒の許されざる愛と添い遂げるための駆け落ちを描き、後半は1992年に起きたインドでヒンドゥー教徒がイスラム教のモスクを破壊したアヨーディヤ事件を下敷きに、宗教紛争を生々しく描きます。この争乱に小さな子供さえ巻き込まれていきますが、救いとして唯一現れるのがおそらくヒジュラであるというのもこの宗教をめぐる対立がいかに無益かのメッセージを感じました。
後半はもうとにかく心が痛むばかりのシーンが連続するのですが、前半はお子さんたちの伝言ゲームのように可愛らしくコミカルな場面や、「子はかすがい」の両親との和解など、泣かせるエピソードも多かったです。

作品は1995年のものですが、現在もこのような争いが暴力を伴って継続されていることを考えると、宗教が人間にもたらすものとは一体何なのか、と考えさせられました。ラストが安直ではという批判もありますが、もはや祈りのようなあのシーンで終えるほかなかったのかもしれません。