吉太郎

あんの吉太郎のレビュー・感想・評価

あん(2015年製作の映画)
4.1
声に人生が乗る徳江さん
瞼に孤独がかすむ店長さん
まだ横顔に光が差しているお嬢ちゃん。

悟って、飲み込んで、噛み砕いた上で、世界の美しい部分を見つめながら生きる徳江さんと、孤独で、閉ざしているようで、悟り切れずもがき苦しんでいる店長さん。無垢で可愛くて、希望に溢れるワカナさん。この3人が醸し出す絶妙なバランスがこの世を表しているみたいで、なんとも言えず美しい。どうにも折り合いがつけられないこと、自分への悔しさ、情けなさ、不甲斐なさ、恥ずかしさ。色んな場所の人間がいる。長いこと、日の当たらない場所で生きている人間がいる。店長さんが震えてる時に、ワカナさんを一切映さないのが良い。ワカナさんには、この世の中そのものについてなるべく遅く気づいて欲しい。目の前の人一人守るのも本当に難しいね。

ふわふわの毛をまとったトゲトゲのものに何度も何度もひっかかれる。でも夕方の光に照らされて腐りきれない。
生きて行くにはあまりに途方もないけれど、しかし、死んでしまうにはあまりに早すぎる。
吉太郎

吉太郎