BS松竹東急『ゴールデンシアターSP』（「BS松竹東急 開局2周年記念」）で鑑賞。
小さなどら焼き屋「どら春」にある日現れ、僅かな間共に過ごし、去っていった徳江（樹木希林）は儚い桜の花のよう。だが美しい桜花がひとを魅せて脳裡に刻まれるように、徳江との思い出は千太郎（永瀬正敏）とワカナ（内田伽羅）に、劇的ではないが美しく貴いものを確かに遺したことだろう。あらゆるものの“声”に耳を傾ける徳江の姿の温かく柔らかなこと。
徳江の元ハンセン病患者という過去を知っても彼女のことを見て、声を聴く千太郎とワカナに対し、徳江どころか目の前の千太郎やワカナすら見も聞きもしない「どら春」オーナー（浅田美代子）が最も残酷に映った。
秦基博の主題歌「水彩の月」は悪くないが、蛇足に感じた。本作は無音か器楽でエンディングを迎えてほしかった。
