きまぐれ熊

花とアリス殺人事件のきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

花とアリス殺人事件(2015年製作の映画)
3.6
雰囲気は前作と同様良かったんだけど...各々の展開の強度が弱いせいで説得力が持たせられてない気がする

これいる?ってシーンが多い
いやそもそも、前作からそういう映画ではあったんだけど...
前作は各シーンにそれぞれの面白みがあって完結していたおかげで、後の展開に活きなくても不要なシーンだったとは思わなかった
今作はオチが見えない場所が多く「あのシーン結局何だったん?」となっちゃう箇所が多い

あらすじとしては前作の前日譚で出会いの2人の出会いの物語
花が引きこもる原因になった事件を軸にした展開なんだけど、アリスが悪気なく全力で脱線していくって感じ
前作と大きく違うのは目線がアリス固定になっている事
筋を追いやすくする配慮なのかもしれないが残念ながら功を奏しているとは思えない
というか花の内面を描いちゃうと物語が一瞬で終わるストーリーなので致し方ないけど、前作の様なオムニバス的テンポの良さは薄かった

ロトスコープという選択肢を取ったことに関しては難しい
実写でやって欲しかったって意見にはさすがに無茶言うなよって感じだけど、ロトスコープが最適だったかというと...消極的な選択肢だったなって感じ
個人的にはフルアニメで良かったんじゃないかって思う
花とアリスのキャラデザ自体は面影を残しつつアニメ映え寄りのデフォルメデザインで可愛く出来てる
これ自体はうまい落とし所だなと思うんだけど、全体で見るとこれがまた中途半端で判断に困るんよね

問題は、間の取り方、見せ場の用意の仕方が、あくまでも実写映画ベースに進んでいってしまうので、どうしても演技が役者の表情に頼ったものになってること
結果、デフォルメデザインであるヒロインの顔が細かいニュアンスを取りこぼしてしまう。それが各シーンの説得力の薄さの大きな理由なんじゃないかと思う
そのせいで、平泉成似の謎のおじさんはどう見せたかったのかイマイチ伝わってこないし、終盤のトラックとの追いかけっこもアリスの必死さが顔から見えないのでノッペリした印象で通り過ぎてしまった

そんな訳で、ロトスコープは俳優の声と動きを残すうまい落とし所の様に見えて、実は消極的であまり良い選択肢じゃなかったんじゃないかなって思ってしまった
少なくとも惡の華みたいな明確な意図を持った選択ではなかったな
そこが少し手放しで良かったと言えない感じ

もちろん背景音とか無駄のある動きの情報量とかは、実際に演技を噛ませているから出来る事でそこは凄く良かった
例えば運動会で睦美と話すアリスの、踵からぎゅーっと脚をひねり回る動きとか。日常では子供はよくやるけど、ああいうの一般的なアニメでは永遠に出てこない動きなので。
まあだからロトスコープという選択肢を採用した事に関しては功罪あるというか、ばっちりハマったとは言えないって感じ

折角アニメでやるならフリクリみたいに各シーケンスで絵柄をガラッと変えるとか、ガッツリデフォルメするとか、もっと記号的にした方が表現したかった空気感が強く炙り出せたんじゃないかなぁと思わないでもないなぁ
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