青二歳

再会の食卓の青二歳のレビュー・感想・評価

再会の食卓(2010年製作の映画)
3.6
ヒューマンドラマかと思ったら…三角関係ものとして観るとかなりシビアなドラマ。
国民党兵士の帰国事業を舞台にした3人の男女の物語。生き別れた夫婦の再会。本土に残された妻は国民党兵士の未亡人として文化大革命の際は身投げも考えたが、その時支えてくれた男ルーさんと長く連れ添ってきた。一方夫も台湾で再婚していたが妻を亡くし、帰国事業の旅団で上海に帰ってくる。

子供や孫からすれば…唐突におばあちゃんがかつての夫と台湾に行くなんて言い出したら「いい歳して浮かれたこと言い出したΣ(゚ω゚ノ)ノ」ですよ。でも現夫のルーさんは妻の申し出を受けて離婚するという。このルーさんがいいおじいちゃん過ぎる…!妻の生き別れの先夫も煙たがらず、あんな笑顔でお客様としてカニを買って…

しかしルーさんの想いが述べられた辺りから中々にしんどい三角関係が描かれる。何がしんどいって三人ともに数十年の想いがあって、それぞれ真実がある。そうなるともうどっちを選んでも絶対に後悔がある。原題と英題がかっこいいんですが、20世紀の歴史は自分には考えられないくらいダイナミックな人と資本の動きがあるんだなと改めて思います。この物理的な距離と、変わらぬ想いと、築かれる個々の歩みと…それが"本土帰国事業"という政治的な思惑によって、にわかに1点に引き合わされてしまう。渦中の人間にとっては、寝耳に水のこと、昨日までは考えもしなかったこと、かつて夫婦を引き裂いた国民党軍台湾撤退と同じ位、あらがい難く暴力的でダイナミックな波が押し寄せて来た。

もちろん台湾の先夫イェンシェンは帰国旅団に申し込まない選択肢もあった訳ですが。彼にとっては帰国事業が展開したことによって、申し込むか否かで大きな選択をまず迫られてしまっている。彼は残りの少ない人生をかつての妻と暮らしたいと願う。ただ三角関係とはいえ台湾の先夫と奥さんの過去はあまり描かれないので、どうしてもルーさんとその家族が中心になります。観客はルーさんとの数十年の"together"の世界しか見れません。イェンシェンとの数十年にわたる"apart"の想いは類推する他ない。
三角関係ドラマとしてはこういう所が新鮮。意図的に一方が描かれないことで、安易な肩入れがしにくい仕掛けになっているんですね。ヒューマンドラマとしても面白いですが、個人的には三角関係のロマンスに観えたので色々と思う所あり面白かったです。


仏跳牆(ぶっちょうしょう)作りたい!
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