映画作りは『総合芸術』だ。
シナリオ、キャラクター設定、カット割、音楽、音響、全てが調和し、形作られたとき、初めて「一つの映画」として、世に送り出される。
上記の要素全てが良質な映画は、問答無用で見る人の心を大きく揺さぶる作品となる。
人それぞれ、好みの映画や苦手な映画があるだろう。
その好みは千差万別。多様性のある社会だからこそ、さまざまな映画作品が量産される。
しかし、人それぞれの好みというものを超越して、評価されるべき作品というものが、数年ごとに産み出される。それは、作り手たちが全勢力をかけて、誰にも真似されない、真似できない作品を生み出した時だ。
3D映像で、その世界観を完璧に作り上げた、ジェームズ・キャメロン監督の最新作「アバター THE WAY OF WATER」がまさにそれだ。
他に、誰がこんな巨大な作品を作ろうと思うだろうか。
果てしなく労力もかかるし、そもそも映画人としての実力がなければ作り上げられない。当然のことながら、それを形にするためのスポンサーも集まらないだろう。ジェームズ・キャメロン監督は、それを成し遂げている時点で、極めて貴重な映画監督だ。
「アバター THE WAY OF WATER」は、前作となるシリーズ1から、飛躍的に3D技術が高くなっている。キャラクター設定も、何もかも、シリーズ1と比較しても遥かに品質が高い。
ジェームズ・キャメロン監督と言えば、エンターテインメント映画の巨匠であるが、そのエンタメ性はそのまま残しつつも、地球という生命の限りある星を守りたいという社会派メッセージも、より一層込められている所も見どころだ。
全編192分という、長編にもかかわらず、その長さを一ミリも感じさせない映画であった。
この至福のひとときは、どんな映画でも味わうことができないだろう。
映画を見終わった後、この余韻は何かに似ているなと思った。
そうだ、ディズニーランドでエレクトリカルパレードを見た後の、満たされた感じだ。非日常の中で、きらびやかな光の瞬き。その一瞬、一瞬に、愛しささえ感じてしまう豊かな時間。
「アバター THE WAY OF WATER」は、そんな3時間を与えてくれる。