ねこ無双

赤い唇/闇の乙女のねこ無双のレビュー・感想・評価

赤い唇/闇の乙女(1971年製作の映画)
3.8
映像美で彩られた幻想的な吸血鬼譚。
そして女性たちによるクライムムービー。

ベルギーの港町のホテルに滞在することにしたステファンとヴァレリーは結婚したばかり。
そのホテルの建物はまるで美術館のように荘厳な雰囲気。海辺の砂浜にぽつんと建っている。
目の前は灰色に波打つ海。
このシーズンは客も無く閑散としている。

そこへ宵闇の中、真っ赤な車と共に到着した二人の女性。
イローナとエリザベス・バートリ伯爵夫人。

緋色の伯爵夫人と言われたエリザベス・バートリは数多の処女に拷問で死をもたらした。
姿かたちそっくりな彼女は300年前の伯爵夫人と同一人物なのか?

その頃、ブルージュの街では1週間に4人もの若い女性の連続殺人事件が起きていた。
首には傷跡があり、
そして毎回どこにも血の痕跡がない。

誘惑される夫ステファン。
親密になっていく妻ヴァレリーと伯爵夫人。
ここのシーンがとても美しい。
夜の海辺を問答しながら身を寄せ合う。
場面が変わり、月明かりに照らされた長い外廊下。柱による長い影が帯のように横断し、歩く二人の姿。

白と赤が衣装にも効果的に使われ、それが官能的。
伯爵夫人の肌は青みがかったような白さ、ゆえに真っ赤なネイルが映える。
イローナも漆黒の髪に肉感的な容貌で、もうヴァンパイアさまって感じ!

ー時の深淵にたくさんの夜が転がり落ちて
ーもっと早く、もっと早く
ー永遠に
ヴァレリーの耳元で囁く伯爵夫人さま。
物語は思わぬエンディングを迎え、妖しく幕を閉じます。

妖艶な伯爵夫人演じるは、『去年マリエンバート』のデルフィーヌ・セイリグ。
私はイローナを演じたアンドレア・ラウが好みだったので、彼女がヒロインやってくれてたらもっと没入できたと思う。
物語は破綻なく、猟奇性や変態性は無く、ただただ美しい。

この映画を知ったのは去年開催された奇想天外映画祭。
日本未公開のこの映画を字幕つきで観れる機会だったけど、行けずに涙を飲んだ作品。
Blu-rayにてその映像美に触れることが出来ました。


ちなみに拷問の内容ですが…👀

(話だけで実際のシーンはありませんが…)
人間の血が若さの源だと信じ、若い女性を誘拐しては鎖で繋ぎ、その血に入浴し飲んだ。
肉が細かくちぎれるまで鞭打ち、
ハサミで指を切り落とし、銀のハサミで乳首を切り落とす。
錆びた釘で静脈に打ち込み、喉を切り裂いた。
これが美貌の秘訣ですね!