いや、これは狂気だな……
あまりのスパルタぶり、罵倒して貶めて絶望させて追い詰めて這い上がらせて、それを平然とやり続ける姿は、教育者でも音楽家でもなく、ただの独裁的な恐怖の鬼軍曹。
そこで這い上がる人は余程の根性と技術の持ち主か、同じくらいの狂気の持ち主か、あるいは心を麻痺させてロボに撤する人か。
でなきゃこんなのマトモに対峙できない。
こんなやり方は、人そのものを潰すし、物語の中では命を落とす犠牲者も出る。
期待以上のところまで高めたいと言うけれど、傍から見ていてその要求レベル、フレッチャーが求めるものの先にある完成系、完璧さは、もはや技術でも偉大な音楽性でもなく、コンピュータしか持ちえない完全性に見えるし、しかもそのAIが繰り返し働くことで起こす突然のバグによる進化を求めている気がしてしまう。
彼は人間そのものには興味がないから、どこかそこが理解できていないみたい。
もはや、狂気でしかない。
マトモにこの期待を受けたらロボ化するし、ついてこれずに真実を話したら、完全に未来を潰しにかかる。
これが悪意でなく何と言うのか。
あなたがクビになったのは自分のせいだっつの。
密告した、って、実際やってるやん……
結局最後は狂人が狂人を生んだ、狂気のラスト。
凄かったけど、なんか、2人の世界に巻き込まれた形のバンドの人達が不憫にもなった。
あの熱量も凄すぎるけど、気分の悪さも緊張も同じだけ凄すぎる奇作。