MikiMickle

クリムゾン・ピークのMikiMickleのレビュー・感想・評価

クリムゾン・ピーク(2015年製作の映画)
3.4
時は20世紀初頭。
ニューヨーク バッファローに住む24歳のイーディスは、実業家の父と二人暮らし。小説家を夢見る彼女は、社交界に興味もない。
彼女は、10歳の時に、コレラで母を亡くしてから、幽霊を見るようになっていた。
亡くなった母の幽霊が告げたのは「クリムゾンピークに気を付けなさい…」との言葉…

そんな彼女の前に現れた、イギリス人の準男爵トーマスとその姉ルシール。彼らは、レンガ用の土の発掘機を発明し、その資金をイーディスの父に求めにきたのだ。
惹かれあうトーマスとイーディス。
そんな中、トーマスに対し好意を持っていない父の突然の死…
悲しみにおかされたイーディスは、長年彼女をしたっている幼馴染みのアランではなく、小説を認めてくてれ妖艶でミステリアスな魅力のあるトーマスと結婚し、彼のイギリスの館に引っ越すことに…

荒涼としていて、孤高と立つその館。
イーディスは、夫トーマスとルシールと共にその館に住むことになるのだが、
その地は、冬になり雪が降ると、地下の粘土質が溶けだし、積もった雪が赤く染まる事から、「クリムゾンピーク(紅い山頂)」と呼ばれている事を知る…


デル・トロ監督の美的センスはやはり独特で、こだわりが凄いです。
今回も、衣装にしても、ゴシックを貴重としつつ、オリジナリティがかなり溢れたものになっています。
後半の舞台となる屋敷は、衰退した貴族そのものを表すかのように、広さはあれども朽ちており、地下へと続く鉄製のエレベーター、パイプの錆び、トゲトゲしい装飾のなされた廊下、その飾りを取り込んだドレス、蝶と蛾のモチーフなど、美しさと退廃的美学、デカタンスを感じます。
天上に開いた穴からは枯葉や雪が舞い落ちてきます。これがとても美しい…

これらのセット。今では珍しく、全てきちんと組み立てられた建物です。設計から始まり、装飾全てが“本物”の館として作られています。ここにも、デル・トロのこだわり抜いた映画愛をひしひしと感じます。
じっくり見なくてはわからないそのディテールへのこだわり、素敵です。

そして、印象的なのが、その色合い。
暖色に溢れたアメリカとはうってかわり、イギリスの屋敷は寒色と暗い色。時に緑や青に光り、蝋燭のオレンジこのコントラストが美しく妖艶。
その色の対比は、ドレスにも表れており、黄色や黄金色のイーディーのふわりとしたドレスは蝶を連想させ、深い青や黒のスッとしたルシールのドレスは蛾を連想させます。
そして、深紅。発掘される粘土質の土は、水気を含んで真っ赤にドロドロと流れ出し、まるで血のようです。
その紅い粘土は、家の壁や床からも溢れ、地下の採掘作業場のタンクは真っ赤な液体で溢れ、まるで、館の“血”であるかのよう… 地下は胎内を感じさせます…

館の生命… そこに囚われてしまったモノたち…人たち… そこに、悲しみを感じざるをえません。
そういったデカタンスやゴシックの美しさもあるけれども、オタク監督デル・トロの作り出す異形の者たちの描き方はやはり素晴らしい‼‼ 今回も異形への愛を感じます♪
危機を伝えるはずの母の幽霊が真っ黒なドクロという所から始まり、出てくる幽霊は真っ赤な骸骨‼いびつな動きも、ずる剥け感もよいのです♪一般的な“幽霊”の視覚的概念を覆します‼実写とCGを融合しており、リアルさと不気味さがあります。そして、気持ち悪さと切なさも…

ラスト。一面の霧の中、狂気溢れる人物とのバトルも良い。
正直なところ、ストーリーとしてはありきたりだけれども、美的センスは非常に面白いし、かつ、デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』や『デビルズ・バックボーン』や製作した『MAMA』などと同じく、過去の時代背景や、それを背負うものの哀しみも感じる事が出来ました。心を囚われてしまった人の恐ろしさなども…
MikiMickle

MikiMickle