ゴン吉

ソーラー・ストライク2013のゴン吉のレビュー・感想・評価

ソーラー・ストライク2013(2013年製作の映画)
4.0
アメリカの思い上がりと偽善を皮肉ったSFディザスターサバイバル作品。
デビッド・ジェームズ・エリオット、ジュリア・オーモンド、ジョン・マクラーレンらが共演

太陽嵐が頻発して危険が高まっていたが、慢心したアメリカは政府支援の下で初の民間宇宙飛行船クリッパー号を打ち上げる。しかし太陽嵐の直撃を受けた宇宙飛行船はコントロール不能となり、太陽に激突。それが原因で、放電現象が発生して電磁パルスが地球を襲う。刻々と迫る地球滅亡のタイムリミット!
そんな危機的状況にもかかわらず、アメリカ合衆国大統領は、国民や人類の危機よりも死んだ妻への思いにふけることを優先して職務を放棄した上、居場所が分からない自分の娘の捜索を優先する。危機感を覚えた副大統領が、職務を果たさない大統領から権限を剥奪しようとするが逆に射殺されてしまう。
一方、宇宙飛行船の運用会社では、管制官らが職務を放棄して家族のもとに帰宅し、アメリカ空軍基地では上官が部下に基地を任せて家族のもとに帰宅して司令官不在となる。
そんな折、アフガニスタンの難民キャンプに、現地の娘が親の決めた相手との結婚を拒否して逃げ込む。難民キャンプのアメリカ人女性責任者は、部族のしきたりを無視して娘に命を守ることを約束して匿い、娘を迎えに来た婚約者らを追い払う。その結果、婚約者らは太陽放電による電磁パルスをうけて死亡してしまう。
それを目撃したアメリカ人女性責任者は、負傷した同僚を見捨てて現地部族のシェルターへの避難を図る。
シェルターに入れて貰う条件として部族の家長の許しを得るために、命を守ることを約束した娘を裏切って自らの手で彼女を銃殺し、その見返りとして自分は生き延びる。
そんなアメリカ人の自己保身やエゴが渦巻く中、人類の存亡を懸けて2人の男が宇宙に飛び立つ。
果たして二人の宇宙飛行士は地球を救うことができるのか?

カナダは国連活動にも積極的な国。
本作品はカナダの映画で、アメリカ合衆国の隣国であるカナダの視点でアメリカを皮肉っている。
アメリカ合衆国大統領は、自国が世界滅亡の危機を招いておきながら、それには構わずにプライベートを優先したり、アメリカ人の難民キャンプ責任者が、地元のしきたりを無視して勝手に娘を匿っておきながら、自分が生き延びるために娘を騙して射殺するなど、アメリカへの風刺が描かれている。
国連のアメリカ人職員に翻弄されて死んでいく現地の人々たちが切ない。
要領よく振舞った者が生き延び、それに振り回された周囲の人々が次々と命を落としていく。
隣国カナダから見たアメリカの偽善とエゴが描かれた作品で興味深い。
生き残った男が最後に他人事のように呟く。
「あいつが地球を救ってくれた」

2024.5 テレ東で鑑賞(午後ロード・吹替:伊勢田京子 訳)
2021.7 テレ東で鑑賞(午後ロード・吹替)
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