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百円の恋のkuuのレビュー・感想・評価

百円の恋(2014年製作の映画)
4.0
『百円の恋』映倫区分R15+。
製作年2014年。上映時間113分。

32歳のパッとしいひん女子が、ボクサーとの出会いから、毎日をサバイブしながら恋愛とボクシングに目覚めていくのを描いた人間ドラマ活写。

実家を出奔し、100均(100円生活)で深夜労働を開始、ボクサーとの出会いと恋もうまくいかないところに、衝動的に始めたボクシングで人生をやり直そうとする。。。

共演は新井浩文(映画へ帰ってこ~いよ~🎵)は、この人ボンクラ役の演技には味あるなぁホンマ。
ボクシングの演技は、安藤サクラに負け取ったけど。
監督は『イン・ザ・ヒーロー』とかの武正晴。
さえない日々に葛藤し、ボクシングに傾倒するヒロインを、繊細かつ体を張った熱演で見せる安藤に引き込まれるってマジ引き込まれた。
よく出来とるちゅうよりも、出木杉君じゃない、出来すぎた話や。
通常なら、かなりシラケる。
そこまでやらさんでもええんちゃうのって云いたい。
せやけど、不思議とシラケんかった。
むしろ泪さえにじんだし、オイオイって瞬間あっても、そのあとすぐに追い焚きがはじまるようで、冷めかけた湯の温度が上がり、仕上がりは(エンディング)はアルデンテで旨かったじゃない面白った。
でも、タイトルが薄汚い。
百年ちゃうんかい、百円かよ!!っ。
お安いイメージは初っ端から連打される。
ワンカップ大関に、コーラの大瓶コーラもコカ・コーラやペプシコーラのメジャーじゃなくドラッグストアとかに売ってる何処のブランドかわからんコーラ。
タバコ(ロングのラーク・マイルドボックスかよ、小生と同じやんかワカバにしとらんのは甘い)にゲーム、ほんで夜中に出かけていく100均。
どれもチープ。sloppy.
コロナ禍前に、京都の伏見おる親友んとこ行ったとき100均コンビニ初めて連れてってもろた、その時のチープ感が甦った。
主人公は斎藤一子(安藤サクラ)。
32歳の一子は、母ちゃんの切り盛りする弁当屋の2階でだらけきってる。
弛緩しきった肉体と表情も、自堕落で横着なパラサイト生活の副産物や。
ニートって言葉さえ似合わない。
この物語は、そないな一子をもう一段落とす。
妹と喧嘩をして家を出た彼女は、ボロアパートを借りて、ゆがんだ野郎たちの吹き溜まりのような100均でアルバイトをはじめる。
それも午後10時からの深夜勤務。 
そこに、売れ残りを漁るババァはなんかリアル。
福岡県小倉で『ニイちゃんトイレで一発ワンコイン』って声かけてきたババァに似てた。
腐敗と堕落はさらに進みそうやけど、店の近所にボクシングジムがあり、その前を行き来するうち、一子は、窓の向こうでサンドバッグを叩いとるボクサー(新井浩文)の姿を気にしはじめる。
新井浩文エエ演技するなぁ早よ映画界へ戻ってこ~い。恋請い乞う。
野郎の名前は狩野といい、37歳で6回戦ボーイやし、将来には期待薄い。
JBC(日本ボクシングコミッション)は、ボクサーの定年を37歳としてる。
フロイド・メイウェザーや、ウラディミール・クリチコをはじめ、海外にや高齢の世界王者が多いが、バーナード・ホプキンスやジョージ・フォアマンとか、とんでもない歳で世界王者になった例もある。
しかし、日本じゃ居ない。
見当たらへん。
遅咲きで知られた内藤大助(WBC世界フライ級王者)でさえ、ラストファイト (ノンタイトル戦)じゃ35歳と8カ月 やったんちゃうかな、翌年には引退してるし。
一子は狩野の試合を見たとき、狩野はKO負けするが、見ている彼女の表情に電撃が走る。
一子はジムに通いはじめる。
せや、怠惰な生活でたるみきった肉体じゃ、苛酷なトレーニングに耐えられるのんやろか。
なにしろ最初は、縄跳びさえ満足にできひん。。。

安藤サクラは、ここで役者の特権的肉体を存分に見せつけよる。
もともとボクシングの経験はあったんちゃうかな、俄の練習での演技ならスジは良いと思う。(あくまでも女子ボクシングのアマチュアレベルなら)わざとつけた脂肪を一気に落とし、顔つきと身体つきを刻々と豹変させていく過程てのは、驚異的なシフトアップで描き出される。
最も感心させられたんは、安藤サクラが複数のスイッチを入れたり切ったりできる点かな。
その肉体にや、まるで分電盤さながら数多くのスイッチがついているみたいやし、彼女はそれを高橋名人(ファミコンのコントローラー16連射と驚かせたオッサンやけど実はバネを使ってた。)真っ青の眼にも止まらぬ速さで入れたり切ったりしよる。
まるで複雑な楽器みたい。
褒めすぎかな😊。
しかも彼女は、どのスイッチを入れたら自分がどう映るか(つまり、どう動けばどう見えるか)を知悉しているよう。
この本能があればこそ、ちゃんちゃら可笑しい話や、ときおりこぼれるむきだしの感情も、意外にシラケさせへん。
熱くさえなってもた。
トレーナー役の松浦慎一郎や、一子の対戦相手役の白岩佐季子も画面を引き締めていたなぁ。
面白い映画でした。

夢を持って歩む人に栄光あれ!
持ってない人に希望あれ!


皆さん台風には呉々もお気をつけ下さい。
kuu

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