【ラリる体育館】
この伊藤高志という人も、おもしろい映画を数々残していますが、本作はほぼデビュー作で出世作、ですね。
フレーム内フレームが永遠に連続するドロステ効果に、ズームのみでなくフレーム自体の移動を加え、摩訶不思議な空間に酔わせる実験映画。
画面自体は、無人の体育館を撮った地味なものなのに、この手法自体が強烈に襲いかかる。画面の明滅が激化したり、意外と暴力的な仕上がり。
時に、モノが生き物に見えるホラー要素も含んだり。狂うことへの恐怖だろうか?
素は、単なる地味な700枚の写真。思いついたことと、実際に創っちゃったことがスゴイですね。
エドワード・マイブリッジに詐欺師的才能があったら、こんな連続写真を撮ったかも。
このタイトルからは、宇宙空間的な印象を受けますが、映画の内容からいえば、現実離れした、麻痺のような感覚の方を、指していると思います。
こういう作品で脳を揺さぶると、硬化しそうな映画観を、ほぐしてくれますね。
<2023.2.6記>