【先住民大統領誕生までの屍たち】

特集上映「ボリビア・ウカマウ集団制作 革命の映画/映画の革命」にて。

これが(当時)現時点での最新作だそうですね。18世紀末から2006年までの、先住民による抵抗戦史…先住民出身のエボ・モラレス大統領が誕生するまでを再現ドラマで追った作品。

ボリビアの歴史に疎いので、学びの場としてはとてもよかった。が、それ以上のものは得られず。表舞台からは隠されてしまった抵抗の歴史を掘り起こすのが目的だったようですが、そもそも初めて知ることばかりなので、掘り起こし効果がどれほどのものかがわからない。

残虐行為の再現もありますが、各事件そのものの再現深度は、お茶の間向けTVドキュメンタリー程度かと。どうも、ひとつ終わるとサラリと流れてしまう印象。作品の焦点がどこかなかなか見えてこない…(泣)。

しかし印象的なエピソードは幾つもありました。

一番心に残ったのは、荒野で崖の上、ある先住民の指導者が銃殺され、軍が去った途端、丘の向こうから同志が蟻の群れのように素早く現れ、次の瞬間、もう…。

監督の言う「先住民大統領が現れたのは、主権を回復するための、先住民の献身的で永続的な長期にわたる戦いの結果」へと結びつく見事なワンショットでした。

それにしても死の生産量はハンパないです。出さずにいい筈の屍を数えたらいくつあるだろう？と考えてしまった。

作品冒頭、かつての欧州では、カントなどの思想家が先住民逝ってよし！の思想を持っていたことが明かされますが、未だにそんな持ち主、大勢いるのでしょうね。

この戦いは、21世紀に入っても続いていており、『007/慰めの報酬』の元ネタになった水戦争もこの一部だったわけですね。ついこの間の話です。

そして、先住民大統領が誕生しても差別が消えたわけではなく、本作も当然、ハッピーエンドでは終わらない。欧州から入ってきたピアノ曲のコンサートと、その外側をまわる先住民伝統の舞踏を対比させた終盤のシーンが、とても心に残りました。

<2014.5.12記>