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ロンドン・リバーのesのレビュー・感想・評価

ロンドン・リバー(2009年製作の映画)
3.9
2005年7月に起きたロンドン同時爆破テロを遺族の視点で描いた作品。
テロそのものを描かずにテロを描く。56人の死者と700人近くの負傷者を出した恐ろしい出来事の後も関係者以外の日常は淡々と過ぎ去っている様子が街の人々から窺えて、その現実の描き方が良かった。主演二人の自然な演技が作品を成り立たせていた。

このテロ事件で無実のムスリムの若者が多数逮捕されるなどの問題もあった。今作ではムスリムに対して不信感や差別意識を抱く人間の視点で、ムスリムの人間を知り深く関わることにより差別意識が和らいでいく過程を描いている。

エリザベスが住むガーンジー島は人口約6万人程度の小さな島。公用語は英語とフランス語。英国人とノルマン系のフランス人が主に住む島なので違う人種の人間と触れ合う機会が少ない為、エリザベスのように無意識な無力の偏見や差別を抱く人間がいてもおかしくはない。

お互いの文化を知り触れ合う事が差別を無くす為の唯一の方法だと思うけれど、自爆テロはその機会を一瞬で奪い去ってしまう。
人間は年齢を重ねるごとに知識を増やし多くを知っているかのように勘違いし頑なになっていくけれど、実際は知った気になって知らないものの方が多い。
学び続ける事、学べる環境が整った世界を築く事で少しでも悲劇が減れば良い。
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