うめ

フットノートのうめのレビュー・感想・評価

フットノート(2011年製作の映画)
3.4
 イスラエルの大学で、タルムード(聖典)学という同じ分野の研究をしている親子の確執をシニカルに描いた作品。この作品、大学生の頃にゼミやら何やらで先生同士の確執を見知ってしまった人や研究生や副手をされている方はよぉ〜くわかる話である。

 研究者同士の親子が何故いがみ合っているのかというと、この親子の性格や研究姿勢が正反対だからだ。父親のエリエゼルは文献学の研究者。膨大な写本のマイクロフィルムを読み、そこに書かれている語句の違いなどをこつこつ調べる昔ながらのタイプ。一方、息子のウリエルは色んな意味で活動的。同僚とスカッシュをするのが日課で、他人のご機嫌取りにも必死のようだ。そんな二人は経歴も正反対。エリエゼルは20年間これと言った賞をもらったことがない。毎年イスラエル賞の候補になるものの、受賞を逃す。唯一の自慢は恩師のファインシュタイン教授の著作にかかれている脚注に自分の名が載ったこと。それに比べ、ウリエルは多くの賞をもらい、国立学術アカデミーの会員にも選ばれるほどの評価を得ている。

 だが、エリエゼルにイスラエル賞受賞の知らせが飛び込む。驚き喜ぶエリエゼルだが、学会はウリエルに手違えで、実はウリエルが受賞することになっていると伝える。今さらと戸惑うウリエルが取った行動は…。

 エリエゼルとウリエルは親子だからこそ、これほどいがみ合ってしまうのだろう。どちらも相手の能力を認めているが、同じ仕事でも取り組み方が違うため、なかなかはっきりとお互いを讃え合うことはできない。そこに名声の差。この確執の様子が深く重い雰囲気にならないのは、演出のおかげである。

 終盤、ウリエルが取った行動に対するエリエゼルの対応が展開として一番良かった。20年間、誰にも評価されることなくこつこつやってきたことが、まさかこんな形で役に立つなんて…エリエゼルにしたら二重の意味で、ショックがやってくるシーンだ。ただその後、ラストがプツッと切れたように終わってしまうのが少し残念だった。何かしら区切りをつけて終わらせて欲しかった。

 久々のイスラエル映画だったが、こんな映画もあるのだなぁと思った。
うめ

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