前半の戦場の緊迫性が、後半、日常に戻っても繊細かつ濃密な音響、映像構成により、まったく途切れず、劇場では逃げ場のない緊張を強いられつつ、天才狙撃手クリス・カイルの精神崩壊を凝視し続けた。
理屈でいくら正義を言い聞かせても。精神は深く深く蝕まれていく。クリスの戦場と無事を願う妻とのカットバックも地続きだが、帰国後、戦場と日常すべてが地続きになってしまう恐ろしさ。。
エンディングは、現実世界が映画世界を飲み込んでしまう。
凝視し続けたこちらにも侵食してくるような恐ろしさ。
もう言葉も出ないとはこのことだ。
しかしイーストウッドは70歳以降、次から次へと傑作を世に出して、作品の完成度は軒並み高く、まさに映画の世界観を完全にコントロールする神の視点を具現化
しているようだ。