tthk

美女と野獣のtthkのレビュー・感想・評価

美女と野獣(2014年製作の映画)
3.5
『美女と野獣』という古典という古典を扱ったものでしたが、リメイクが多数なされてるのもあって、良い点もイマイチだなと思う点もありました。

イマイチだなと思う点はCGの粗雑さとキャラクター化です。ところどころで、遠景にCGを使ってるのですが、フランス絵画的と言えばそうなんですが、どこか粗雑で前景と溶け合っておらず、なんだこれ、となってしまいました。ファンタジー(幻想)なんだからいいんだと言えばそうなのですが、私には気がかりでした。もう一つはキャラクタライジングです。ディズニーでは、城(城主)を見守る存在で、ベルのお世話もしてくれる心優しいティーポットやキャンドルたちが見事に愛くるしいキャラクターになってましたが、本作では一切そういうことはありません。犬がキャラクター化されていましたが、はっきり言うと造形が気持ち悪いです(笑)目といい、不自然な耳の巨大化といい、気味が悪いです。その点、ディズニーはとても優秀なんだと感じられました。

次に良いと思った点です。
まず、色彩です。ベルの赤いドレスももちろんですが、自然の描写が素晴らしいと思いました。全体的に淡い色で統一され、(前景との統一の点ではイマイチでしたが)遠景の描写はまるでロマン主義絵画のようで、見ていてウットリとさせられました。そこにビビットなバラの赤色が入ると、赤色がとても映えて、感動します。
次に、脚色です。Wikipediaにもあるように、何故城主は野獣になってしまったのか、が描かれていて、かつ、それも不自然なものではなく、良かったと思います。ただ、なぜベルが(自然の神を殺したが故に野獣になってしまった)城主を憐れんだのかが不明瞭で、そこは納得しませんでした。

最後に、私事なのですが、なぜ毎度『美女と野獣』を思う度に胸糞が悪くなるのか、もわかってよかったです。
『美女と野獣』はものすごく簡略化すると、罰を受けて当然なことをした男が、当然のように罰を受け、突然やってきた女性を束縛し、結婚へと追い詰め、おまけにその罰も何故か取り消しにする、という全くもって不可解なストーリーで、悪い事した奴のくせに免罪されて、おまけに素敵な女性をパートナーにつけるなんて、胸糞悪いな!と思っていました。
が、本作を見るにあたって、少し『美女と野獣』について調べたのですが、それによると『美女と野獣』というのは多くの若い女性に読まれ、結婚前の女性の教訓話として機能していたことを知りました。つまり、結婚するとこんなことがあるから気をつけなさい、というものだったそうです。とすると、野獣は当時の亭主関白的な男性像の象徴として描かれているので、納得がいきました。貴族的な男性は家族をおざなりにして、狩猟にはげみ、食事には出てこいだの、俺様が持ってきたドレスは素敵だろ?と言うわけです。それに対して、そんな貴族的な亭主に反抗し、きちんと同列な関係としてパートナー関係を結ぼうとし、心の底から愛し合うことを望む女性は、理想の女性像なわけです。というように、これまでの『美女と野獣』の見方をいい意味で覆してくれるきっかけとなってくれました。

あともう一つ追記なのですが、Wikipediaにフランスではウケたが、海外ではダメだった、というのがおもしろかったです。やはり、フランスでは『美女と野獣』といえば語り継がれている、みんなが知ってる昔話である一方で、その他の国では「ディズニーの『美女と野獣』」が先に来てしまうから、受容に差が出たのかなと思いました。
tthk

tthk