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ヤング・アダルト・ニューヨークのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

4.0

#ヤングアダルトニューヨーク
アダムドライバー出演コメディ。
ブルックリンを舞台に、妻との間に子供がいない40代の男が、自由に生きる20代の男と出会い人生が動き出すジェネレーションギャップもの。

30~40代で都心暮らししてて、子無しだったり独身の人が観るとけっこう共感できると思う。


【1】世代間ギャップ
先に、ジェネレーションギャップものと書いたが、主人公ジョシュ(ベン・スティラー)と妻のコーネリア(ナオミ・ワッツ)が悩んでいるのは同世代との価値観のギャップ。
主人公夫妻は2度の流産を経るうちに40代になり、子供を持たないという選択をした。しかし、大半が子供を持つ同世代の友人たちは子供中心の社会/価値観の中で生きている。

趣味やファッションよりも、子供の教育ばかりに感心が向く友人たち。

ジムに通って体型を維持し、サブスクを使いこなして動画配信を楽しむなど、効率的に現代社会を乗りこなしているジョシュたち。
体は40代になってしまったが、同世代の友人たちとの間には埋められないギャップが生まれていた。

そんな彼らの前に現れたジェイミー(アダム・ドライバー)とダービー(アマンダ・サイフリッド)は、SNSから解放され、自由に生きる夫婦だった。
アンティークのレコードを収集したり、自分の作りたい映像を製作したり、ヒップホップを踊ったり、自前のアイスクリームブランドを作ったり。

同世代とのギャップを感じていたジョシュたちは、ジェイミー夫妻の生き方に惹かれていく。



<以下、ネタバレあり感想>




【2】キャラクターについて

◆ジョシュ(ベン・スティラー)
40代の売れないドキュメンタリー映画監督。
頑固で見栄っ張りなところが欠点すぎるけれど、全体としては割と共感できるキャラだった。
演者が50歳近いこともあり、今どきの40代にしては少し老けすぎているような気もしたけれど。

◆ジェイミー(アダム・ドライバー)
自由に人生を謳歌しているように見えて、その実かなり効率的に人生を計画している打算的な若者。
前半の彼のキャラクターが魅力的なぶん、真相がわかった後の彼の姿との間に大きなギャップがある。

ブチキレてるジョシュが目の前にいるのに「何が?」的にすっとぼけた感じがアダムよなあと思った。
この映画観てるとGoProとオシャレ帽子が欲しくなる。

◆コーネリア(ナオミ・ワッツ)
演者がかなり美人なので、中年らしく不恰好に踊るシーン等が不自然すぎて笑う。いや絶対もっとカッコよく踊れるだろと。
同世代のママたちが子供を連れてペタンコの靴履いてるのに彼女だけモデルみたいな恰好でヒールの高い靴履いてる絵が面白かった。

◆ダービー(アマンダ・サイフリッド)
自由に人生を楽しんでいるようで、少し陰のあるキャラ。
ジェイミーと一緒にいて、実際のところ彼女がどう思っているのか気になった。彼女目線だと話が違って見えそう。


【3】若さとは
ラストシーン、ジェイミーを「悪魔」と呼ぶコーネリアスに対し、「悪魔じゃなくて若いだけだ」と返すジョシュ

多少の嘘を入れつつ効率的にドキュメンタリーを製作するジェイミーの姿勢は合理的。
ドキュメンタリーは誠実に製作すべきというジョシュの考えの方が、昔ながらの若者らしく、ジェイミーの方が打算的な大人風という逆転現象が起きている。

昔のCMキャラのネタをYoutubeで知って表面的に楽しむジェイミーに対して、本当はこういう声だ!と憤慨するジョシュは子供っぽい。

けれども、何もかも合理的/効率的に生きることだけが正しい人生という姿勢こそが現代の若さであり、
かつて「若さ」「青くささ」とされていた、創造への情熱や妻への愛情を大切にしようという価値観に至ることが現代の大人だという話。

人生、何を大事にして生きていくべきか。
ジェイミーがジョシュに見せた虚構の姿が、ジョシュの人生を変えたというのが面白い。


【スコア】
★4.0で。

ベストシーンは、アダムが両手を離して指パッチンをしながらゴキゲンに自転車に乗るシーン。
中盤までの彼のキャラクターと、わけのわからない展開は最高だった。

後半かなり話が転換してアダムのキャラは失速したが、反面、主人公に共感できたからまあ観れる。
アダムドライバーは最終的にいつもモラル/常識のネジがはずれたようなキャラを演じることが多い気がする。

上映時間がコンパクトなのもよい。
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