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ハミングバードのevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

ハミングバード(2013年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

アフガニスタンで軍法違反を犯し、その後ロンドンの陸軍病院から脱走したJoseph Smithは、若いホームレスIsabelと共に路上生活をしていたが、悪漢に襲われた際に離れ離れになってしまう。

途中のフラッシュバックで大体の見当はつきますが、戦地での詳細は最後まで分かりません。”Combat stress”や罪悪感を酒で紛らわすと、彼の視界には何羽ものハミングバード(ハチドリ)の幻視が現れます。

長期間住人が留守の部屋を拠点にJoeyと名乗り、Isabelの行方を探しながら中華系犯罪組織の仕事を得ると、急速に実入りが良くなります。

原題は”Hummingbird”ですが、米題は ”Redemption” で、ホームレスの世話をする修道女Cristinaのバンにも ”Sisters of Redemption” とあります。犯罪で得た大金を、かつてのホームレス仲間や、長年疎遠と見られる妻子、そしてCristinaへと還元していくJoeyの姿は、まるでロビンフッドのようです。これは彼の贖罪の過程なのか?いや、そもそも違法行為で埋め合わせできるのか?

地上波なので削除されたかもですが、JoeyとIsabelの関係性がほとんど描かれていません。しかしJoeyは、自分の「味方」と認識した人には恩を返し、またその人の身に何か起きれば、やり返さずにはいられない性分であることは伝わってきます。

「敵」にはツケを払わせる。
では、Joey自身は償うのか。

我が身の罪を。
不可避の状況下で、選んでしまった犯行を。

天使と呼ばれているCristinaの場合、Joeyに打ち明けるまで、(当時を覚えている者以外、)本人と神だけが知っている罪です。嫌になれば「制服を脱いで」辞めることもできるのに、あえて誘惑を断ち、神の教えを選ぶ。他方、Joeyの行いは追跡ドローンに記録されています。そして今も罪を重ね、監視カメラ網から逃げ続けている。
どんなに目を逸らしても、過去の行いを無かったことにはできない。戦争を始めたのはJoeyではないし、Cristinaの境遇こそ不条理と不本意の積み重ねだが、彼女は粛々と己の運命を受け入れている。彼女に出会って、Joeyは十字架を背負う覚悟ができたでしょうか。この辺りがテーマの一つかなと考えるのですが、神の目は誤魔化せないぞという宗教色を足すか、軍隊に入った経緯を描けば、説得力が増したと思います。

軍曹→脱走兵→ホームレス→半グレギャングと堕ちていくJoeyを軌道修正する所か、尼さんの方が逆に引きづられて堕落していくのかと、着地点がなかなか見えませんでした。修道女が、あんなにハメを外しても良いのでしょうか😅

“You want me to drive?”
こんなに優しい声も出せるとは。
地球生命体最強アニキの泣き顔には、ちょっと胸を締め付けられます。しかも結構髪が生えてます。
背景は”Eastern Promises”に近いです。何を期待するかで大きく評価が分かれてしまうと思いますが、アクションだけじゃないStathamを観たい人にはお勧めです。


***

運命の10月1日。
なぜこの日付なのか。
カトリックでは、St. Thérèse (1897年9月30日没)の追悼記念日。海外宣教と宣教師の守護聖人とのこと。関係ないか。
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