このレビューはネタバレを含みます
1972年制作、サム・ペキンパー監督、スティーヴ・マックィーン主演によるガンアクション満載のハードボイルド・アクション・サスペンス映画の秀作である。
登場するのはワルばかりの為、観ているうちに主人公が善人に見えてくる。
ワルの物語の中に極悪がいるということなのだ。
サム・ペキンパー監督の風味がよく顕われている作品で「ワイルド・バンチ」、「戦争のはらわた」、「わらの犬」同様、無駄な装飾が無い硬派好みの骨太で荒くれ者達の映画という感じがあって大好物である。
封切り時、劇場で観たが終盤の怒涛のように畳み掛ける緊迫感あるガンアクションに興奮と緊張、陶酔の極致に達したことを思い出す。
ペキンパーは大概、ラストに見せ場を持ってくるが、いずれもハードアクションにスローモーションを卵でとじたような味付けで散りばめ、コクが出る如くにそのバイオレンス感が更に強調される。
多くのご婦人方は目を伏せたり顔を手で覆ったりするが、然もありなんで猛烈な音響と共にスローモーションで血飛沫が飛び、階段の手すりや壁土が飛び散る様は他のアクション映画の比ではない。
よく事故の瞬間に情景がスローモーションになるというのを聞くが、その感覚を映像化している如くである。
元々この手法は黒澤明監督の「七人の侍」からの引用であるが、今ではペキンパーのお家芸にもなっている。
また、ペキンパー監督の特徴的な編集としてこれから先に起こる出来事をカットバックさせる手法があげられる。
出所後、公園に立ち寄りマッグローと戯れるシークエンスはこのカットバックが印象的に使われている。
ところでスティーヴ・マックィーンは「大脱走」で着ていたT2の革ジャンが板に付いていたが、その下に着ていた袖長のトレーナーも実にバイクに馴染んで良かった。
本編では一転ダークスーツに白シャツとネクタイ、刈り上げ頭でこれまた渋い。
渋いと言えば共演のベン・ジョンソン、アル・レッティエリもこれでもかというぐらいに渋い。
レッティエリは同年に公開された「ゴッド・ファーザー」のイタリアンマフィアのソロッツォ役でも知られているが、アクの強い顔で記憶に残る。
マックィーンと後に結婚するアリ・マッグローもゴミ収集車に詰め込まれ、吐き出されるに至って本気で怒ったようだがゴミ溜めでの2人のラブ・シーンはマッグローの可憐さも手伝って印象に残る。
実の所、マッグローは「ある愛の詩」の思春期少女と大人なびた本編ぐらいしか知らない。
ペキンパーは本作に不満だったようだが、あに図らんや映画は大ヒットしている。
マックィーンも「砲艦サンパブロ」のような切ないのもいいが、こういう荒々しいマックィーンも彼の醍醐味であり、記憶に残る1本である。