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四畳半襖の裏張り しのび肌のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

3.3
神代辰巳監督が「四畳半襖の裏張り」の成功を受けて翌年発表した日活ロマンポルノ第2弾。
内容的には全くの別物で、大正中期から昭和にかけて収集したセックスに関する資料「高資料」の“小さな悪魔”をもとに中島丈博が脚本を書き上げたもの。
色街を舞台に置屋で育った早熟な少年が身近な芸者たちと奔放な性遍歴を繰り広げる様子を、当時の世相を背景に描いている。

芸者の花清(宮下順子)は、同じ芸者の染八(絵沢萠子)に子どもが出きて旦那の横井に捨てられた腹いせにその赤ん坊を盗む。その直後(大正12年9月1日の正午) に関東大震災が起こり、自分で育てる。

時は経ち、昭和初期の花街。
花清は芸者置屋"尾花家"のおかみになっていて、子ども(16才ぐらい?)の正太郎/しょうちゃん(中澤洋)はまだ精子も出ないのに性的には早熟で、芸者の小ふく(芹明香)や小八重(吉野あい)と戯れる。
困った花清は子どものがいない映写技師の俊介(花上晃)と美也子(丘奈保美)の夫婦に正太郎を預けるが、そこでも正太郎は夫婦二人と戯れ、美也子は身ごもる(精子が出るようになっていた)…
小ふくも身ごもり、なんと花清の旦那の小宮山(江角英明)が身請けする。
やがて、生みの親・染八が訪ねて来て出自を知った正太郎は、育ての親である花清にも手を出し花清も身ごもる。
ラスト、正太郎は身ごもった女たちに見送られ、"太鼓持ち"になるため満州へ旅立つ…

「もしあたしの方が先に子どもができていたら、あたしを奥さんにしてくれたんですか?」
「親子で同じ旦那を持つなんて…」
「天皇陛下の御為に…
千人針お願いします」
「男と女にゃ、あれしかないよ。万歳」

前作より物語性があり作品の完成度が増している。
日本が侵略戦争に向かい、"子どもが国の宝"であった時代が背景になっていて、田坂具隆監督の「土と兵隊」の映像が効果的に使われている。
姫田真佐久のカメラが捉える絵画的な美しい映像に何度かハッとさせられる。
奇妙な猥唄も情緒を感じさせ、雰囲気を盛り上げる。
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