チッコーネ

悪魔の起源 ジンのチッコーネのレビュー・感想・評価

悪魔の起源 ジン(2013年製作の映画)
2.5
UAEがトビー・フーパーを指名してホラーを作らせたとは考えにくいので、フーパーが同国内の金持ちの中から資金提供者を見つけたのであろう。
国土の大半を占める砂漠の風景や、ドバイの近代的な街並みを楽しめる作品かなと思ったのだが、ロケ場面はわずか。
イスラム装飾が美しい高級マンション内での展開が大半と、アメリカでも撮れそうな背景ばかりで、期待外れだった。
とは言えキャストの九分九厘をアラブルーツの役者が占めており、アラビア語も頻繁に登場する。

ホラー・クラシックの『エクソシスト』は、イラク古代遺跡の発掘現場から物語が始まるが、本作の冒頭ではUAEが石油を掘り当てる1960年代以前、漁業に頼っていた時代の回想が挿入される。
その起点から連なる主人公夫妻はせいぜい30代ぐらいにしか見えないのだが、本編は携帯電話が頻繁に登場する現代劇と、時代考証が雑…。
CGに頼ったジャンプスケアを多用、ヒロインの恐慌が延々続く展開で終盤まではあっという間である。
隣人の集まるホームパーティ場面だけが、異質で華やかな雰囲気を放っていた。

「アメリカで生まれたジンを封印しただけでなく、アメリカに戻りたがる妻」へ抱く夫の憎悪が目を覚ますクライマックスを観るにつけ、本作の裏テーマについても考えさせられる。
ベトナム戦争世代の監督にとって、イラク戦争やアラブ諸国への軍事介入は、手放しで支持すべきものでなかったに違いない…、その皮肉な視点には、大いに共感する。