一人旅

英国万歳!の一人旅のレビュー・感想・評価

英国万歳!(1994年製作の映画)
4.0
ニコラス・ハイトナー監督作。

英国国王ジョージ三世の乱心と王室内の混乱を描いたコメディ。
精神状態が悪化した結果、国王とは到底思えないほどに異様な行動を取ってしまうジョージ三世の哀れ過ぎる姿が面白い。序盤に国王が見せる威厳のある態度は完全に失われ、手荒な精神科医の無力な患者に成り下がってしまうのだ。我を忘れて暴れ出す国王を敵国の捕虜のように椅子に縛り付ける場面に、これでも国王なのか・・・?と笑ってしまった。国王のオシッコと大便が毎日チェックされ、健康状態も随時把握させられる。何人もの臣下に自分の汚物を見られて一喜一憂されるのかと思うと気の毒で仕方ないが、それでも立派な国王(いや決して立派ではないが・・・)という事実が可笑しみを生んでいる。乱心を続ける国王の奇想天外な言動によって混乱を深める宮殿内を面白可笑しく描くだけでなく、“国王・現首相“対“王太子・野党党首”の政権争いや、国王と王妃シャーロットの夫婦愛までも描かれ、中身の濃い作品になっている。
国王ジョージ三世役のナイジェル・ホーソーンや王妃シャーロット役のヘレン・ミレンは見事なハマり役だったが、それ以上に存在感を放っていたのは国王を治療する大任を任された精神科医ウィリスに扮したイアン・ホルムだ。国王を見つめることが無礼とされているのに、ウィリスは国王の目をキッと睨み付ける。「私は国王だぞ!」と激昂する国王に対し、「いいえ違います。あなたは私の患者です」と言い切るウィリスの姿に爽快感すら感じてしまうのだ。
日本の皇室と英国の王室でだいぶ国民間におけるスタンスが違うようだ。言い方は悪いが、ここまで自分の国の王室を小馬鹿(?)にしたような映画が許されてしまうことが不思議だし、日本だったら絶対にあり得ない。
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