エジャ丼

ジャージー・ボーイズのエジャ丼のレビュー・感想・評価

ジャージー・ボーイズ(2014年製作の映画)
4.5
「夢、栄光と挫折—— それでも僕らは歌い続ける。」

ニュージャージー州で生まれ育った貧しい少年たち、トミー・デビート、ニック・マッシ、フランキー・ヴァリ、そしてボブ・ゴーディオにより結成されたバンド『フォー・シーズンズ』は「Sherry(シェリー)」「Big Girls Don’t Cry(恋はヤセがまん)」などのヒット曲に恵まれるが、その成功の裏には光と闇が存在した。

フランキー・ヴァリを演じたジョン・ロイド・ヤングはブロードウェイ版でも同役を演じているため、流石の歌唱力。

4人が揃い、フォーシーズンズとして活動するまでをやや長尺であるが決してだらけることなく、繊細に、丁寧に描く。また4人の一人一人がバンド成立の過程の補足や、それぞれの場面での彼らの心情、そして歌唱シーンの最中でさえ我々観客に語りかける演出が相まってメンバー4人のキャラクターが掴みやすく、非常に感情移入がしやすい。その演出が結果を出すのは「My Eyes Adored You(瞳の面影)」のシーン。

Headed for city lights
Climbed the ladder up to fortune and fame
I worked my fingers to the bone
Made myself a name
『きらびやかな都会の灯りに向かって
富と名声の階段を登ったんだ
一生懸命働いて
自分を売り込んできたんだよ』

Funny, I seemed to find
That no matter how the years unwind
Still I reminisce 'bout the girl I miss
And the love I left behind
『不思議だね どうやらわかったよ
どうしたって時は巻き戻せないことが
好きだった少女のことを
今でも懐かしく思ってしまうんだ
そして置いてきてしまった恋のことを』

シーンの詳細は控えるが、この歌詞がその状況、心情を正確に表しており、非常に心を動かされる。

フランキー・ヴァリのソロ曲として代表的なものが「Can’t Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)」がある(この映画を観るまでてっきりボーイズ・タウン・ギャングのものだと思っていた)。誰もが一度は聞いたことがあるであろうこの曲が、ここぞというときにフランキーによって歌われる。加えてラストシーンまでも彩る"あの"演出など、クリント・イーストウッドの映画人としての圧倒的経験豊富さが光る。音楽の伝記映画の中で素晴らしい作品は、たとえその音楽に馴染みが無くとも、我々の心を揺さぶるものだと考えるが、この作品はまさにそれに当てはまる。傑作。