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ジュラシック・ワールドのhorahukiのレビュー・感想・評価

ジュラシック・ワールド(2015年製作の映画)
4.1
あら…?こんなに面白かったっけ??
当時劇場で見て面白かったんだけど、正直そんなに…っていう感想だったのですが、見直したらめちゃくちゃ面白かった!最初から最後まで旧作のオマージュ盛り沢山な『ジュラシックパーク』大好き監督による愛に溢れる作品でした。

そしてある意味、恐竜版『ミュウツーの逆襲』と言っても良いんじゃないですかね??厳密には違うけど(^_^;)

本作は、テーマパークにて怪物に襲われる系のパニック映画。なので恐竜たちの魅力はもちろんですが、それ以上に登場人物たちのドラマに重きを置いている。メインに描かれるのはテーマパークに遊びにきた幼い弟と思春期真っ最中な兄。そしてパークのスタッフとしてラプトルを担当するクリプラとラプトルのブルーの2組。

前者の方は一作目へのリスペクトに溢れたものになっているし、後者は一作目へのリスペクトをしつつも現代的な方向に舵を切り、独自のテーマを打ち出すという、時間を置いた続編として非常に誠実で丁寧な作品になってるように思います。

一作目は恐竜嫌いな姉と逆に大好きな弟の姉弟とそれを導く恐竜大好きだけど子ども大っ嫌いなグラント博士という凸凹な組み合わせが、一緒に時間を過ごすことでまるで親子のような関係性を築くとともに、子どもたちだけでなく大人も、恐竜を通して「人間と他の生物とのあるべき関係」について学ぶ過程を描いていたと思います。

本作ももちろんそういったところは踏襲している。特に兄弟の方は、両親が離婚寸前で恐らく2人で旅行ができるのは最後のチャンスかもしれない。そのことに2人とも薄っすらと気づいてる。兄は思春期全開で女の子ばっかり気にして弟には少し冷たい。弟は恐竜大好きではしゃいでるけど、兄には冷たくあしらわれる。でも、危機的状況に身を置くことでこの2人がお互いのことをどれだけ大切に思っているかという本心が自然と溢れてくる。男兄弟って照れ臭くて本心を言えないことってありますよね。そういったところが凄くリアルだし、2人の絆を描くドラマがやり過ぎずでさりげなくて心が温まります。

そしてもう一方のクリプラとブルー。ラプトルを人が飼いならすことが不可能なんてのはシリーズファンにとったら共通認識なわけですが、そういったところを裏切らず、それでいてテーマを一歩前に進めている。人間と他の知的生物に主従の関係なんてない。でも何も生まれない訳ではない。お互いがお互いを尊重し理解しようとすることで純粋な「信頼」が生まれる。そして、人と人の絆、人と他の生物の絆、そういった温かいものが人間の醜い部分である「傲慢さ」の象徴を打ち砕く。「絆や信頼」と「驕りや傲慢」の対比構造を終盤までのドラマをもって際立たせ、その暗喩的戦いとしてラストバトルを描きつつ、しっかりと『ジュラシックパーク』として成立させた製作陣の手腕と愛が凄すぎる!

本作は最初から最後までオマージュが盛り沢山ですが、そんな小手先だけの過去作オマージュネタだけに止まらず、しっかりと一作目の本質を捉えて踏襲している。そして、過去作にはなかった現代的な考え方をそこに加えることで、現代に『ジュラシックパーク』を蘇らせることに成功した誠実で丁寧な続編だと言えると思います。そんな訳で『炎の王国』も見てきましたが、私は本作の方が好きでした。
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