Kuri

チョコレートドーナツのKuriのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
4.6
数時間前に
満席の映画館で鑑賞したのですが

見終わってから
余韻がずっと続いているのです。
これからも続いてくような、
生活のとなりに寄り添ってくれるような、
素晴らしい作品でした。

以下はネタバレです。

映画の構造としては、
困難で不利な状況に置かれた主人公たちが
悪戦苦闘して乗り越えてくって
定型的なお話。

80年代初頭のアメリカで
弁護士とドラッグクィーンのゲイカップルが
ダウン症の子供を引き取る為に闘う。

それだけで
これは勝てるわけないとわかる。
当然、負ける。
さらに
悲劇が追い打ちをかけて
そのまま物語は終わる。
現実を突きつける、確かな悲劇。

その物語を
大きく舞い上がらせるのが
ドラッグクィーンを演じる
アランカミングの歌声。
何を歌っても
生きる哀しみがにじみ出てくるような、
素晴らしい歌声。

映画の最初では
女装で口パクでおどけてた彼が、
映画の最後に
真っ白な衣装に身を包んで
自分の声で唄う。

いつの日か/私たちは/解放されるだろう

日本でのタイトルは
ダウン症の子供が好きなものそのままで
まるで子供中心の話のように思うけど、
原題は"いつの日か"。
それが
過去なのか今なのか
未来なのかは、わからない。

部外者のつもりで
そんなの勝てるわけないなんていって
傍観してるだけでは
悲劇は繰り返される。

劇中で
差別問題と闘う黒人弁護士が口にする言葉
"これが現実だ、でも進み続けるんだ" 。

今でも、おなじだと思う。
忘れた時には
また見返したいなあ、
90分くらいで観られるし。



珍しくパンフレット買って、
この映画のプロデューサーふたりがゲイカップルであり、
彼らがゲイとレズビアンの養子縁組禁止を違憲とした判決を
引き出した当事者であることを知りました。

なんか、
最後の最後まで誠実な印象です。
Kuri

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