eucalypso

オール・ユー・ニード・イズ・キルのeucalypsoのレビュー・感想・評価

2.5
「宇宙戦争」+「スターシップ・トゥルーパーズ」+タイムリープ。

冒頭から沿岸の戦場でループを繰り返すのかと思いきや、少しづつ話も舞台も展開していく裏切りが心地よい。その間に(端折られてるけど)、トム・クルーズは何百回も死んで学習して現実の細かなディテールを記憶、自分で自分をサヴァン症候群に改造してる感あり。「メメント」の逆アプローチみたいで面白い。

トムだから、どんなに酷い目に遭っても大丈夫という満場一致の安心感はやはり凄い。車の下に滑り込み損ねて...とか、本来のトムとのギャップを笑う前半のアイロニカルなコメディタッチはよかったのに、後半、真面目一辺倒に。

ギタイは割と蚊帳の外というか、あまり怖くない。挙動が素早すぎて重力を感じないのでCGっぽいし。マザー・エイリアンな設定も食傷気味。脅威としての敵の描き方は同じエミリー・ブラント主演の「クワイエット・プレイス」の方が上手いと思う。

ギタイを倒す装置が金庫に入れてあったり、ギタイの親玉がランドマークな目立つ場所に潜んでいたり、そもそも、ギタイの血を浴びてタイムリープ能力を得る設定がかなり雑駁で適当。将軍や仲間の兵士たちも、当人しか知らないことをトムが言い当てると、トムにホイホイ従う。物分かりよすぎだし、すべてはトム無双をお膳立てするためなの?と。

遠目で腕立て伏せをしてるエミリーは静止画にしか見えず、ずっとトムをその姿勢で待ってるように見えてしまい、ゾッとする(手抜き?わざと?)。つまるところ、何度も世界は書き換えられるけど、トムありきの唯我論的世界でしかなく、トムが認識しなければ、存在しないのでわ?

ラストはご都合主義なハッピーエンドで、トムが自分の願望を満たすために作った仮想現実に住むことを決めて、エミリーはその一部に、という風にも取れる。いやー怖い。

色々難癖つけるような映画じゃないことは、エミリーがサーベル持ってドクロの仮面つけた従者と登場した時点で察しろと。リアルな戦争映画か、トムを弄ぶコメディに振り切ったら、好みだったかも。

デザイン面では、ドローンみたいな輸送機がすぐにも現実化しそうで◎。

ゲーム感覚のループ物と言えば、昔観た、クローネンバーグの「イグジステンズ」の後味の悪さが印象に残ってる。「バタフライ・エフェクト」も同系統。過去を書き換えすればするほど事態は酷くなり、やり直しは効かず、繰り返すことの無意味さが浮き彫りになり、虚無感に囚われる。本作はその延長線上にあり、軽くてサクサク進むので虚しくはなるけど軽傷。
eucalypso

eucalypso