YYamada

オール・ユー・ニード・イズ・キルのYYamadaのレビュー・感想・評価

3.7
【タイム・パラドックス佳作選】

◆パラドックス発生の方法
〈タイム・ループ〉
 →戦死すると、
  また同じ日が繰り返される

〈見処〉
①トム・クルーズ「史上最弱」ヒーロー
・『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は、『ボーン・アイデンティティー』のダグ・リーマン監督による、タイムループを題材にしたSF映画。
・舞台は「ギタイ」と呼ばれる謎の侵略者と人類の戦いが続く近未来のヨーロッパ。
・米軍広報担当官ウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)は、戦闘経験がないにもかかわらず最前線に送り込まれ、あえなく戦死するが、ケイジが意識を取り戻すと、周囲の時間は戦闘が始まる前に戻っていた。再び戦死するとまた同じ時間に巻き戻り、不可解なタイムループから抜け出せなくなったケイジは、同様にタイムループの経験を持つ女性兵士リタ・ヴラタスキ(エミリー・ブラント)に訓練を施され、やがてギタイを滅ぼす方法の糸口をつかみはじめる…。(eiga.com)
・本作は、同じ時間を何度も繰り返すはめになった兵士が、幾度もの死を経験し、成長していく姿を描いているが、本作冒頭のケイジ少佐は戦闘行為に逃げ腰で、他作品では見られない、トム・クルーズ史上最弱キャラ。彼の弱々さと、ビルドアップされたエミリー・ブラントの力強さが、作中でクロスし、立場が入れ替わるのが印象的である。
・日本では原作と同名タイトルにて公開されたが、海外では、ワーナー・ブラザースの意向で『Edge Of Tomorrow』のタイトルで公開。しかしながら、興行不振をダグ・リーマン監督に咎められ、英語版のDVD発売時には、リーマンの意見に基づき『Live Die Repeat』へとタイトルが変更された。

②日本発の原作!
・本作は2004年12月に刊行された、桜坂洋による日本のライトノベルを基にした脚本をワーナーブラザーズが約300万ドルで権利取得し、映画化されたもの。
・原作者の桜坂氏は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『恋はデジャ・ブ』により、アイデアを想起したそうだ。
・映画化された本作では、登場人物や舞台設定、ストーリー展開もハリウッド仕様に
大きく変更されているが、ループ設定などのテーマ性は原作を踏襲している。

③結び…本作の見処は?
○: 「日本原作、トムクル―ズ主演」。「ギタイ」など日本語をもとにした要素を踏襲しつつ、ハリウッド大作として、巧くマッチングしている。
○: 本作を契機に「肉体派アクション」作品の出演が多くなったエミリー・ブラントの新境地が見ることが出来る。
○: 「タイムループ」の主導権を敵陣と争うストーリー展開は、過去の同ジャンル作品になく、目新しい。
○: 『プライベート・ライアン』を彷彿とさせる冒頭の戦闘シーンは、激しくリアリティーが高い。
○: 行き詰まった場面でリセット=死亡。重複したシーンを極力排除した編集の巧さを感じる作品。
▲: 『パシフィック・リム』さながらの終盤の攻防は、タイムループを基としたストーリーから少々脱線気味であるのが残念に感じる。
YYamada

YYamada