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パージのbutasuのレビュー・感想・評価

パージ(2013年製作の映画)
2.5
惜しいなぁという印象。

1年に1晩だけ殺人を含む全ての犯罪が合法になる"パージ"という設定は面白い。この制度によりアメリカが経済や治安が極端に安定した国家になっている、という前提だけで、思考実験としてはいくらでも面白い仮定が考えられそう。

ところが、この映画ではあまりその辺りはどうでも良くなってしまっており、普通の一家が殺人者たちから身を守るただのパニックホラーに終始してしまっているのだ。せっかくの設定がそこまで活きていない気がして、何とも勿体ないと思ってしまった。

でもそれならそれで、悪趣味なスラッシャーホラーとして面白エンタメに仕上げてくれていれば構わないのだ。ところが、この一家が何というか緊迫感に欠ける。行動に一貫性がないし、行き当たりばったりで頭が悪い。「なんでそんなことするの?」「なんでこうしないの?」の連続で、観ていてどうにもモヤモヤする。

一番の問題は、元凶が「逃げている黒人を家に入れた」という息子の"優しさ"だったこと。その行為自体は本来正しいことなのかもしれないが、パージという設定を楽しみに観ている観客にとって、この行為はイライラのもとでしかない。この息子は常に黒人優先で動くのだが、家族は皆殺しにされても良いのかね?せめて悩めや。パニックホラーならせめて、もうちょっと万全の準備をした賢い一家の攻防を見せてほしかった。家族の落ち度とかではなく、もっとパージという制度自体の問題を見せてくれよ。そもそもこの設定ならもっと何重にも安全策を練っておくべきだし、有事のときの対応は決めておくべきだろう。セキュリティがあまりに簡単に突破されすぎて全然意味をなさないのもどうかと思う。呆気なく家の電気を落とされて真っ暗って馬鹿なの?すぐに破壊できてしまう防護壁って何よ?

というかあの黒人はパージの晩にあんなところ(パージ賛同者の金持ちが住むエリアの屋外)でわざわざ何してたの?自衛ができないにも程があるだろうよ。

続編ではもう少し話を展開させてくれるかなぁ。
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