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LEGO(R) ムービーのymdのレビュー・感想・評価

LEGO(R) ムービー(2014年製作の映画)
4.3
クリストファー・ミラーとフィル・ロードといえば名作『くもりときどきミートボール』の監督・脚本を務めたコンビであり、そんな彼らが作った本作も当然名作。

この二人は大傑作『スパイダーマン:スパイダーバース』にもクレジットされており、現在の3DCGアニメーションにおけるヒット請負人のような存在になっている。

全編CGで制作されているのだけど、まるで本物のレゴを使って撮影されているように錯覚するほどにきめ細かく繊細な表現に脱帽する。誰もが知るレゴという題材の魅力と個性を余すところなく生かし尽くした演出の巧みさに舌を巻く。

とにかくその拘り方がすさまじく、爆発や煙、水流などのダイナミックで複雑な動きもまるでストップモーションを駆使しているかのような”あえての”チープさを残したかのような描き方をしているのが素晴らしい。
もちろんストップモーションは膨大な労力と工夫が必要とされるすごい技術だけど、「それっぽくフルCGで細部まで徹底的に作り込む」作業も尋常じゃない。

ストーリー的には題材的にも近しい『トイ・ストーリー』に通じるものがあるけれど、トイストーリーがあくまでも玩具は子どもの為にある、という目線で作られていたのに対して、本作はもっと視野を拡大し、子どもも大人も夢中になれる(=夢中になっていい)ということを提示している。

それはレゴというブロック玩具が持つ魅力そのものであり、本作はつまりレゴの映画としては完璧にその立場を確立することに成功しているといえるだろう。

自由な発想で好き勝手に組み立てて夢想する子どもも、決められたマニュアルブック通りに組んで堅実な世界観を眺める大人も等しく「楽しんでいる」わけであり、本作はその視座を脚本上に巧みにブレイクダウンさせている。

(クライマックスにおける視覚化されるメタとは別次元で) ある種メタ的な構成なわけだけど、本作が素晴らしいのは1984的な社会を単に否定したマイノリティ的な理想論を唱えるだけでなく、そこに違和感を抱かずにひたむきに生きる市井の層たちまでをも掬い上げるような門戸の開かれ方をしていることにある。この圧倒的な愛!

レゴだから許される(であろう)毒っ気の強いギャグも笑えるし、バットマンをはじめとしたキャラクターたちの活躍も見どころが多くて楽しい。
子どもはビジュアルそのままで楽しめるし、大人はそこに隠されたセンテンスの一つ一つに胸がときめくはず。

こんなベタ褒めしまくる予定じゃなかったんだけど、書いているうちにどんどん愛着が湧いてきて、3.8点くらいかな、なんて思っていたんだけど結局上方修正してしまいました。でもそのくらい素晴らしい映画でした。
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