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FORMAのwigglingのレビュー・感想・評価

FORMA(2013年製作の映画)
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危険な映画だ。女という生き物の恐ろしさ、わけの分からなさを描いた作品とも取れるが、もっと広い解釈もできる。それについては後述。

評判は聞いててずっと観たかったけど機会がなく、立誠シネマで毎年末上映していることを知り駆けつけることに。
実はこの夏、脚本の仁志原了さんが他界されたのだそう。彼は吉田恵輔監督とのコンビで才能を発揮していた方で、本作では俳優としても抜群の存在感を見せていました。
そんなこともあり、今回の上映には特別な思いがあったとか。

本作、ものすごく変わってます。こんな映画初めて観たかも。
カットを割らないわ、人物に寄らないわ、ゴロッとした塊を無理矢理口に押し込まれる感覚。それは映画体験の質を高めたいという想いからなのだそう。本作を体験してしまうと、他の多くの映画は分かりやすく噛み砕かれた流動食のようなものであることが如実に分かります。

特にロングショットのシーンが特異で、どこを見ればいいのか分からないんですよね。顔を判別できないほどカメラが遠いので、長いこと画面の中を視線がさまよってしまう。
そして語り草になってる超長回しの公園のシーン。長回しだけじゃなく様々な破格っぷりに腰を抜かしました。
このマジックにやられた自分は、知らない間にフレームの外で何かが起きているのではないかと、常に神経を尖らせるようにも。

Filmarksでの星の数やレビューの文字数を見てわかる通り、そういう分かりにくさがマイナスになってないのが凄いところで。自分で読み解く心地良さにつながっているんですね。
この絶妙なバランス感覚は偶然なのか、坂本監督の才能なのか。次作を観てみないと判断できないけど、自分の直感は後者だと言っています。

時制操作のセンスの良さも抜群。
紙袋を書店に置き忘れた時のカットのタイミング、最後のコンマ数秒がずっと心に引っかかり続ける。他にも、誰だこいつ?と思わせる編集も実に見事で。
これを才能と言わずしてなんと言う。

高校の同級女子ふたりが9年ぶりに再会することで、過去をめぐる想いが交錯し思わぬ復讐劇に発展するというお話。
観るものを戸惑わせるのが、二人の記憶が食い違っていること。どちらの言い分が正しいのか、どちらの人間が信用できるのか。それは劇中では提示されない。我々にできるのは、なすすべも無く立ち尽くすのみ。

これって、あまねく揉め事に言えることなんですよね。個人同士のいざこざから国際紛争にいたるまで、立場が変われば認識も変わるし考え方も変わってくる。単純な二元論に落とし込めるものではない。
小さな関係を描きながら、大きな世界まで語っているんですね。

予想外の舞台挨拶で終電を逃すというヘマをしでかすも、急遽手配した宿までの道々を坂本監督とご一緒できるという幸運に恵まれました。
キアロスタミの大ファンだそうで、『クローズ・アップ』凄いよねとか。映画駄話たいへん楽しゅうございました。
次作も頑張るとのことで、超期待してます!
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