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インセプションのkuuのレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
4.2
『インセプション』
原題 Inception.
映倫区分 G.
製作年 2010年。上映時間 148分。
クリストファー・ノーラン監督が、オリジナル脚本で描くSFアクション大作。
主人公コブにレオナルド・ディカプリオ、共演に渡辺謙、ジョセフ・ゴードン=レビット、マリオン・コティヤール、エレン・ペイジほか。
再視聴です。

人が眠っている間にその潜在意識に侵入し、他人のアイデアを盗みだすという犯罪分野のスペシャリストのコブは、その才能ゆえに最愛の者を失い、国際指名手配犯となってしまう。
そんな彼に、人生を取り戻す唯一のチャンス
『インセプション』
という最高難度のミッションが与えられる。

『心とは氷山のようなものである。
氷山は、その大きさの7分の1を海面の上に出して漂う。』
     BY ジークムント・フロイト

我々が常に認識している『心』は、氷山の一角。
その下に、残りの7分の6たる、氷山の実態が隠されている。
『内省』という概念を知っている、若しくは鍛練してる人なら、この実態の把握は容易である。
それに比べて、せいぜい『反省』という概念しか知らない人は、この『氷山の一角』のみに支配され、それが自分の心の全容だと勘違いしている。。。

インセプション『情報を植えつけること』。
夢ん中を幾層にも創造できて、その夢ん中を構築できるてのは面白え。
まさに夢がある空想妄想が広がる。
せや、夢ん中であそこまで現実と同じ自己を確立し自在に行動し制御できて、薬を使って逃げ道があるけど、他人の夢に多人数が入り込めるってのにはリアリティ云々は抜きにしても違和感は感じるのは否めない。
夢ってのは、現実離れしたモノばかりを見たりするのが面白い。
まぁ、そもそも現実と思わせつつアイデアを盗むってのが基本な話やけども。
アイデアを盗む。
潜在意識の投影とは云うが、その意識下に置いておけんのかなぁ。
アイデアが浮かんだら、どこかに書きとめるなり、打ちこんで保存するなりしないと余程のモンじゃなきゃ忘れそうやけど。
鎌倉時代に明恵って坊主も、忘れちゃう夢を40年やったか書留めた『夢記』ってのを残してる。
かなり頭がええ坊主やっても忘れんように紙と筆を枕元に置いて目覚めて直ぐに書き留めたと云うしなぁ。
その人知れずアイデアを盗むってのもう~んって感じ。
せや、そう書きつつ、これは映画としちゃメチャクチャ面白い作品です個人的に。
自分が認識する世界はどこまで信頼できるんかって、極めて哲学的なテーマを扱いながら、超一級のエンタメ作品としても成功している。
せやさかい、凄い映画やと思うんでガス。
人の夢の中へと入り込み、その人が将来、考えつくであろうアイデアを盗むことを生業としとるディカプリオ演じる主人公コブ。
因みに『Cobb』てのは、サンスクリット語で『夢』ちゅう意味がありますが、キリスト教的な解釈をすりゃ、旧約聖書に登場するヤコブ(Jacob)に由来するものとも、深読みしたら考えられる。
ヤコブはヘブライ人の族長やし、ユダヤ人は全てヤコブの子孫と考えられてっさかい、チームリーダーにふさわしい名前ていやぁ名前かな。
話はそれたけど、恐らく映画でしか表現できひんであろう設定を最大限活かして、クリストファー・ノーラン監督は、今まで誰も観たことがなかった世界を見事に映像化して魅せてます見せます小太郎に(坂上二郎風に古っ)。
第一層から第三層まであり、それぞれが全く違う世界で、下に行けば行くほど時間の進み方も全く違ってくる。
複雑な人間の深層心理の中を、コブたちはどんどんと心の奥深くへと沈み込んでいく。
それを徹底的にスタイリッシュに、ほんでアクション映画としても一級品の迫力をも備えた映像で描いてる手腕は、見事としか云いようがあらへん一休さんもビックリ。
そこへ絡んでくる、コブ自身の亡き嫁さんを巡る哀しい思い出もまた切なくて良い感じ。
ほんで、最後、コマがこけるのかどうか、その寸前で終わるちゅう、最高に格好良いラストっ!
『このまま、コマがこけるかどうか?
それを信じるんは、お前たちしだい』
何度みても観終えたあと、あまりのシブさにしばらく痺れます。
因みに映画の主要人物の名前を並べてアタマの一文字を抜き出すと、DREAMS(夢)ちゅう単語になる?!
D(Dominic Cobb)
R(Robert)
E(Eames)
A(Arthur、もしくはAriadne)
M(Molly Cobb)
S(Saito)

ほんと今作品は難解、深い不可解。
ノーランが何を云おうとしているのかを完全に理解することはできない。
それがどれほど魅力的であるか描く手腕にかかってる。
それを、お見事なほど料理して並べられた今作品のオードブル。
確かに、夢の主題と同じくらい密で複雑な主題に取り組むことをあえてする彼の大胆な新しい創造物を完全に吸収するために、1つが複数の視聴を必要とするかもしれません。
夢の本質を理解するのは簡単じゃない。
特に、夢は論理に反しているように見えるから。
今作品の要素のいくつかについても同じことが云えるが、夢が実際に何であるかを理解するためには、まずそれらが意識の一部ではないことを受け入れる必要があり、したがって合理性では理解できない。
フロイトは、先にも記した、合理的な心は、我々が見る氷山の7分の1であり、残りの心は前意識と無意識で構成されていると云う。
フロイトはまた、夢は無意識への道であり、意識と無意識の間の状態である前意識の中に存在すると信じていた一人だ。
ノーランが視聴者に今作品に近づくように推し勧めるのは、この文脈においてで、ここで、泥棒がアイデアを盗むために夢の中で人の心に入る企業スパイの世界を想像する。
そして、ノーランは作中、ルールを構築する。
夢の中で死ぬことの意味。
痛みを感じることができる夢の理由。
夢の中で見る人々の重要性。
夢の時間とリアルタイムの違い。
ノーランが映画で作り上げる規則がたくさんあると云うのだけで十分難解にさせる。
夢のアレコレにある程度の経験がある人は、これをより早く理解する可能性があるけど、そうでない人は、ノーランの世界の背後にある論理と規制を受け入れるのに時間がかかる可能性があると思う。
しかし、そんなんを抜きにしてもエンタメとしても十分楽しめる作品と云える。
ピョンピョンツノツノ兎に角、それが夢中になって興味をそそられることは間違いないかな。
これはすべて、映画の前半で行われ、後半では開始自体の舞台を設定する。
ここは、説明に反する層状の夢の世界の中で、設定された独創的なうぬぼれ。
ノーランは、これらの精巧な夢の層の相互接続性を使用して、いくつかの息をのむようなアクションの光景をインターカットしてます。
高速車両、高速道路、追跡内のホテルの廊下に沿った無重力の戦い内の、北極内の金庫室の襲撃。
(記載するだけで頭が混乱する)
これらはそれぞれそれ自体がスリル満点ですが、ノーランのビジョン。
ウォーリー・フィスターの広大なフィルム。
リー・スミスの細かい編集。
これらのセットピースの同時展開は非常に魅力的です。
壮大なアクションに加え、ノーラン監督は、コブの亡き妻モル(マリオン・コティヤール)との苦悩に満ちた過去にも心を揺さぶるし、しかし、終盤にノーラン監督が明らかにした、コブの未解決の罪の意識は、感動的な結末をもたらし、観る者の度肝を抜く。
ノーラン監督は、登場人物を最もよく体現できる俳優を選ぶコツを知ってるかのよう。
ディカプリオの役柄は、前作『シャッター アイランド』を彷彿とさせるかもしれないが、彼が、強烈でありながら心に響く、完璧な演技で映画を支えていることに疑問の余地はない。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットは自信と気迫を放ち、エレン・ペイジは適切なウィットと気概を示し、特にマリオン・コティヤールはエッジが効いていながら最終的には心を打つ演技で、拗ねと危険の両方を醸し出している。
しかし、今作品はあくまでもノーラン監督の構想であり、実際、先見の明のある監督だと個人的には思てる。
脚本は何年もかけて練り上げられたものであり、それは、今作品を知的かつ直感的に楽しめるものにしている細部と複雑さに現れている。
今作品でノーランは、別世界の可能性、意識の及ばない複雑さ、そして、最も重要な想像力の可能性に、視聴者の心を解き放つよう誘う。
今作品は、その天才的な才能を十分に理解するために、観た後すぐにもう一度観たくなるような、重層的で、深遠で、魅力的な、稀有な作品と云える。
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