僕が一番好きな監督でもあるクリストファー・ノーラン監督の大傑作『インセプション』が、109シネマズプレミアム新宿で「35mmフィルムによる特別上映」されていたので飛びつくように足を運んできた。(1席6500円。笑)
同じクリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』とは違うタイプのSFだが、それぞれ凄まじい完成度。
企業スパイのコブ(レオナルド・ディカプリオ)は眠っている人物の潜在意識に潜り込み、アイデアを盗み出す危険な仕事のスペシャリスト。
コブは、その才能から国際指名手配を受け、さらに妻の殺害容疑もかけられていた。
そんなある日、サイトー(渡辺謙)から、ターゲットの潜在意識にアイデアを植えつける「インセプション」という仕事の依頼を持ちかけられる。
コブは任務の危険性を理解しながらも、最後の仕事としてを引き受け、屈指のスペシャリストたちと共に夢への潜入を図る。といった内容。
「夢へ入る」着想自体好きだが、「夢の中の夢の中の夢」といった具合いに、何階層にも入っていき、それぞれの階層で展開されるストーリーが、《他では観たことがない体験》を味わわせてくれる。
【今どの階層の話か?】
【どの時系列か?】
【夢か現実か?】
実にクリストファー・ノーラン監督らしい仕掛け。
「頭を使うので嫌い」っていうレビューもお見かけして、それも分からないでもないが、僕は頭使う系の映画大好き。笑
と言っても、彼の作品の中ではそれほど難解ではないのではないだろうか?
夢を設計する場面や、夢の中も面白く、予告にも使われて有名になった「建物がまるでサイコロキャラメル(←今あるのかな?)の箱のように畳まれて天地がひっくり返るシーン」をはじめ、「街がドンドン弾けるシーン」や「長く無重力状態になるシーン」など、ビジュアル的にも驚かされるところが多く楽しめる。
アカデミー賞視覚効果賞と撮影賞のW受賞も納得。
きっとノーラン監督は、諸手を挙げて喜んでいることだろう。メイキングで制作秘話も観たから余計にそう思う。
映像にインパクトありまくりの本作だが、合わせて音関連も素晴らしい。
これまた、アカデミー賞の「音響賞(録音賞)」と「音響編集賞」をWで獲得している。
アカデミー賞4冠。
(作品賞、脚本賞、撮影賞、視覚効果賞、美術賞、作曲賞、音響編集賞、録音賞の8部門にノミネートを果たしている。)
劇伴はノーラン監督の御用達でもありアカデミー賞常連のハンス・ジマー。
『ブレードランナー2049』のレビューでも熱く語ってしまったが、『ダークナイト』含むノーラン・バットマン3部作をはじめ、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの曲はあまりにも有名。
重厚かつ“うねる“ような音作りが上手い。
効果音も面白い。
今回は、【音響を坂本龍一が完全プロデュース】した109シネマズプレミアム新宿にて鑑賞したわけだが、彼いわく「日本で1番音のよい映画館になった」と言うだけあって、なかなかの音質だった。
実はこの“なかなか”というのは作品のせいでも劇場のせいでもなく、ソースのせい。
この度、貴重な35mmフィルムで観られたわけだが、どうしても35mm上映ゆえ、どんなに設備が整っていても最新音響設備の能力を最大限に発揮できるはずもなく、音質的には予想通りの結果に😅
35mmフィルムは、音そのものを記録できる情報量が今の最新デジタルフォーマットと比べ少ないので、IMAXやDolby Atmosのように濃密な音や、飛び交うようなサラウンド感は乏しくなってしまう。
個人的には35mmフィルムのいわゆる「フィルムライク」な発色やチラつき、黒が沈まないところも好みではないので、今の時代なら圧倒的にデジタル上映がよいなと感じた。
けれど、劇場音響設備の音がよかったのは間違いない。
吸音率はだいぶ高めでデッドな音場で静粛感があるので音がよく聞こえる。
ただ個人的には、もう少し吸音を抑えてライブ気味の方が好み。
ボリュームは控えめ。
音質で言うと、関東では屈指の高音質を誇る川崎のチネチッタ(音質のよいライブハウスでもある“クラブチッタ”のエンジニアチームが設計しているだけあってハイクオリティな音質)の方が、音圧、サラウンド感、ライブ感、全てにおいて上かな。と思ったが、何分今回35mmなので、その辺は平等に比較できない。
今度はデジタル作品を鑑賞して、じっくり味わいたい。
109シネマズプレミアム新宿での鑑賞と言えば、今回【1席6500円】もするS席だったこともあり、座り心地は最高。→最高すぎて本気で寝そうになる。笑
電動リクライニング付きの、広く豪華でフカフカな座席はたまらない。
しかも、空港のゴールドラウンジのような広い専用待合室があり、上映開始の1時間前から「ドリンク飲み放題」、「ポップコーン食べ放題」、さらに鑑賞後には、眺めがよく素敵なソファーや高級チェアがある別の専用ラウンジで「ゆっくりと無料でドリンクを飲める(僕は飲まないが1400円までのお酒も飲める)」ので、コスパは悪くない。
何より贅沢な時間を過ごせる喜びがあるので、お近くの方はぜひ1度体験してみて欲しい。
初めてでうれしかったもので、劇場を長々と語ってしまった。笑
さて本作は、SFアクションであることは間違いないが、夢を巡りながらのサスペンスを軸としながら、ヒューマドラマとしても秀逸。
いや、違う。
秀逸どころか天下一品の脚本と演出。
次第に《夢か現実か分からなくなってしまう怖さ》もあって、それが物語にも大きく関わってくるが、夢か現実かを知る手立てとしてのアイテム【トーテム】に心を大きく揺さぶられた。
公開当時、最後の解釈には、オープニングからのつながりなどを考えたり、様々な考察が飛び交っていたが、僕は鳥肌が立ちまくった。
ラストの映像を終えてからの余韻が半端ない。
大好きかつ、SF史に残る超名作。