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ガチバン MAXIMUMのTMCのレビュー・感想・評価

ガチバン MAXIMUM(2011年製作の映画)
4.5
再鑑賞。
日本映画専門チャンネルでこれを途中から見たのがガチバンにはまったきっかけ。
当時は窪田正孝も鈴之助も知らず、ちょうど映ってたクライマックスの地下バトルのシーンをなんとなく見てて、悪役にしか見えなかった学生服が主役だったのに驚いた。
気になってレンタルでちゃんと見てみたら、記号的で漫画的なわかりやすいキャラ設定ながら内省的で哲学的な面もあり、主要キャストの演技力とも相俟って妙に心に残る作品で他のシリーズ作品も見るようになった。

数年ぶりにシリーズを見直してる中で、三宅隆太監督のシナリオ術を通過した目で見るとガチバンはソフトストーリー作品なんじゃないかと思えてきた。
個人的な解釈としては、アベンジャーズのように他者を安全圏から見て楽しむ/白黒はっきりついてカタルシスがあるのがハイコンセプト作品で、大事件は起きず/話にはっきりした決着もつかないだけにリアルで自分に引き寄せて見れる作品がソフトストーリー作品。

特に窪田君=勇人が主役の何本かはシリアスタッチで、ハイコンセプト的なカタルシスも少なく、勇人がこだわる「ヤンキー」を観客それぞれの何かに仮託して見る事もできる。つまり自分事に思えてくる作りで、憑依型俳優・窪田正孝との相性がいい。
対して「番長」がキーワードの窪塚〜佐野ラインの初期シリーズはそうでもない。面白いけど、カリカチュアされた学園不良モノとしてありがちな範囲内であまり葛藤もない。
佐野=紋次は後期に遠藤雄也とのW主演でシリーズ中で一番追い込まれるシリアスな作品に出ていて、ここではややソフトストーリー化している。

自分(の行動規範)に正直に生きようとすると必ず社会との軋轢が生まれて、それがドラマを生む、というのがこのシリーズ全般の駆動力。
ベタベタに記号的なキャラと設定+人間存在の矛盾と葛藤の物語になっている事で、わかりやすさ+普遍性を獲得している。
座組やテーマによってあたりハズレは大きいけど、上手くいくとハイコンセプトとソフトストーリーのいいとこ取りな傑作が生まれることもある仕組み。
ジャンル映画はハイコンセプトなもんだろうと思ってたので意外だったけど、自分が何故ガチバンを面白いと思うのかがわかった気がする。
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