ホロコースト生存者の精神的ケアをする施設が舞台。自身も生存者であり、戦前にサーカスのピエロをしていたアダムは、持ち前の話術で周囲の注目を集め、他の患者や医師、看護師から特別視されている特殊な存在。
しかし、彼がホロコーストで受けた屈辱は人としての尊厳を踏みにじられたもので、次第にアダムの心の闇が明らかになって行く…。
飄々と話すアダムの様子とホロコーストでの出来事から始まるのだが、彼の性格のように話が掴めず、難解映画かも…と思ったが、まさかの斜め上を行く展開で、ぐいぐいストーリーに引き込まれてしまった。
ホロコースト生存者の話なのに、虐殺の描写がない映画は初めて観たかもしれないが、それにも関わらずアダムが受けた仕打ちは、ある意味虐殺よりも残虐で、とても恐ろしかった。
考えれば考えるほど、心がぐちゃぐちゃになり、頭がおかしくなりそうになって涙が出たけど、実際彼らはナチズムにより、精神が破壊されてしまっているんだから、その辛さは計り知れない…。
生き残ってなお苦しむ。元には戻らない…。PTSDなんて言葉では軽すぎると思ったし、生きている事が救いとも限らない。真の救いなんて存在すらしないとさえ感じた。
とてもじゃないけれど私には、ホロコースト生存者の気持ちや辛さは、想像すら及ばないし、分からないという事が分かった映画だった。
何度も思考停止しながらやっと観終えました。
かなり衝撃的で、考えさせられる1本。社会派映画が好きな人は好きかもしれない。精神的に辛く重く、引きずる系なので、エネルギーがある時にどうぞ。
ジェフ・ゴールドブラムの演技が凄かった…。振り返れば、難解かもと思った構成やセリフも彼の心を思うと納得出来た。