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アメリカン・ハッスルのYYamadaのレビュー・感想・評価

アメリカン・ハッスル(2013年製作の映画)
3.7
【戴冠!ゴールデン・グローブ賞】
 ~オスカー前哨戦を制した作品たち

◆第71回(2013)G.グローブ作品賞受賞
 (ミュージカル・コメディ部門)
◆同年のアカデミー作品賞
『それでも夜は明ける』

〈見処〉
①どこまで実話?奇想天外な群像劇
・『アメリカン・ハッスル』は、2013年に公開されたハリウッド・オールスターによるクライム・コメディ。
・舞台は1979年のニュージャージー州アトランティックシティ。詐欺師アーヴィン(クリスチャン・ベイル)とその愛人シドニー(エイミー・アダムス)は、FBI捜査官リッチー(ブラッドリー・クーパー)に逮捕され、無罪放免を条件に「架空のアラブ人富豪をダシに、カジノ利権に群がる政治家・マフィアを一網打尽にする」おとり捜査に協力を持ち掛けられる。
・アーヴィンとシドニーは、標的のカーマイン市長(ジェレミー・レナー)に近づくが、2人の仲を嫉妬するアーヴィンの妻ロザリン(ジェニファー・ローレンス)がおとり捜査を阻害。事態は複雑化していく…。
・本作は、1970年代の収賄スキャンダル「アブスキャム事件」を起こした実在の詐欺師メル・ワインバーグを基としたフィクションであるが、クリスチャン・ベールが演じたアーヴィンとワインバーグは恐ろしいくらいの模写の完成度を誇っている。

②デヴィッド・O・ラッセル
・本作の監督を務めるデヴィッド・O・ラッセルは、近年では寡作の監督であるが『スリー・キングス』(1999)の成功以降、
00年代には社会派監督として名を馳せた名監督。
・一時低迷したものの『ザ・ファイター』(2010)にて1億ドル以上の興収を挙げ、復活。アカデミー作品/監督賞を含む7部門にノミネート。クリスチャン・ベールとメリッサ・レオにオスカーをもたらしている。
・さらに次作『世界にひとつのプレイブック』(2012)でも、アカデミー賞8部門にノミネートされ、ジェニファー・ローレンスが主演女優賞を受賞。
・デヴィッド・O・ラッセルが最も脂の乗っていたこの時期に、前2作の主演俳優C.ベール、B.クーパー、J.ローレンスの3人を投入し、実話をベースとした作品を演出したい彼の意向に沿って製作されたのが、本作『アメリカン・ハッスル』。
・デヴィッド・O・ラッセルは、意図的にキャスト全員に今までのイメージとは違う配役を実施。気心の知れたC.ベールとJ.ローレンスにはアドリブ演技を認める一方、
初めて演出を手掛けたエイミー・アダムスを泣かせるほど厳しく接し、善人役の多かった彼女の新境地を引き出している。

③結び…本作の見処は?
○: 予断を許さないストーリー展開。正義と悪の境界線が曖昧な、詐欺師・FBI・マフィアの三者の駆け引きの勝者は?
○: 5名の主要キャストが非常に個性的。特に当時22歳で既にオスカー主演女優賞を獲得している妖艶なローレンスが唄い踊る「死ぬのは奴らだ」のブチギレ具合。
○: 元祖「ストイック俳優」のデニーロが気が付かなかったほど、劇肥り配役をこなしたベールのカメレオン演技ぶりは特筆。
○: 70sメガヒットによるサントラが秀でている。
▲: 時系列がわかりづらい演出は改善余地あり。
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