鰹よろし

サイコメトリー〜残留思念〜の鰹よろしのレビュー・感想・評価

3.3
 韓国の警察は薄給の割に危険が多くやりがいなど皆無。しかも人手も足りないときているもんで、舞い込んでくる事件には優先順位を付けざるを得ず、可能性の低いものはどんどん捜査の対象から排除されていく。中でも子どもの誘拐はその最たる例で、基本門前払いで身代金の要求があるまでは初動捜査すら行われないという...

 刑事という本業を放っぽり出してまで副業のネットワークビジネス(ねずみ講)で最優秀成績を収めるチュンドンは、ある時他の刑事が見向きもせず押し付けられるカタチで携わった誘拐事件に入れ込むが、捜査の甲斐なく最悪な結末を迎えてしまう。

 事件を前後しての同僚の態度に憤り、そして自身の不甲斐無さに打ちひしがれるチュンドンだったが、誘拐事件を伝えるニュースを眺めていると、現場周辺の空撮映像に見覚えがあることに気付く。遺体発見前(捜索願が出される前)に見た壁の落書きに酷似していたのだ。彼はその時に出会った落書き青年との接触を試みると共に事件を解決すべく奔走する...

 誘拐殺人事件の被害者遺族の苦しみを身を以て知る刑事と、自身の手が大切な人の死に直結してしまったことがありまたその能力故犯人と同じ立場にも立ちうるサイコメトリー青年の、一見正反対にありながら共に過去に囚われている2人が打ち解け合っていくバディものの様相は中々にハートフル。

 当初のチュンドンの像と明らかになる過去とでの乖離に若干の違和感を覚えるものの、物語のメリハリにはなっているし、事件解決へと急激に動き出す営業成績ナンバー1のセールストークは必見だ。

 そして2人の確かな絆が確固たる結びつきが児童誘拐事件解決の希望となり得る一方で、これからも灯り続けるだろうその確信は、今もどこかで誰かがとする絶望の先行によってもたらされるモノでもあることはしかと受け止めるべきだろう。何とも切ないラストだった。


「絶対能力 FBIサイコメトラー捜査官」(2006)...「殺人の告白」(2012)...「極秘捜査」(2015)...「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」(2016)...「刑事7人 シーズン7 第8話」...
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