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六月の蛇のMoviePANDAのレビュー・感想・評価

六月の蛇(2002年製作の映画)
3.3
『愛する女性とのすれ違い』

モノトーンというより、青みがかったその都会に降りしきる雨。その雨足はとても強く、容赦なく彼女の体を濡らしていく。

明らかに挙動不審な彼女の目線。それに対し、彼女に向けられる視線の理由は別にあって…


観ているこちらの部屋の湿度がぐんぐん上昇しそうなこの映画。塚本監督が「正方形にしたかった」と、画角と色合いにこだわった作品。

簡単に言えば夫婦の“再生”の物語でありながら、それだけにとどまらず、この映画は人間の欲望と愛の深さに迫る。

主演の黒沢あすか。『嫌われ松子』で彼女に惚れ、この作品を後追い鑑賞。女優の力を思い知らされる、実に素晴らしい名演!喘ぎ悶える姿は時にやや過剰気味になるも、解放を体現した姿は美しく、夫に目撃される“変化”を遂げてからの彼女は“かっこ”は同じでも同一人物とは思えない色香を醸し出している。

夫婦に限らず、付き合っている男女なら陥るかもしれないこの問題。大切な女性(ひと)だからこそ、大事に思うからこそ、付き合いはじめのような情熱をぶつけてよいものか?という想い。互いに想いはあれど、言い出せないふたり…

起こり来る不可解な事象。それはとりわけ、解放に向かうまでのストレスを悪夢的に具現化したかのよう。この映画、この表現描写故、観る人を選んでる感もあり。ただ、この夫婦に感じる歯痒さに対しての荒療治としては、その暴力と凌辱がその後の解放のオーガズムへの助走になっている。

それを受けてのラストのあの姿。それは、“美しさに溢れた”というより、まさに欲望赴くままの人間らしい姿。ふたりの愛と欲望はどこへ向いたのか?映画の行方が気になってしょうがなくなった時点で、僕はどうやらこの映画という蛇に飲み込まれていたようだ~>゜)ーーー
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