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女っ気なしのcyphのレビュー・感想・評価

女っ気なし(2011年製作の映画)
5.0
ぜったい好きだよと5万人に言われてはいたけど完全にオールタイムベスト これから好きな映画聞かれたらパンチドランクラブと緑の光線って答えようかなと最近宣言していたけどそれに並べよう わたしは非モテとして生きる人間の積み上げられた孤独およびそれが打ち破られる瞬間にだけ差す特別な光のことがだいすきでだいすきでそれを見たくて映画観てるんだ

遭難者では変質者寄りに描写されてたシルヴァンが本作では打って変わってかわいくいじらしいテディベア的非モテとして描かれていてびっくりしたけど、それはシルヴァンの内面ではなく相対する人間が180度違うからなんだよな 美しすぎる母娘という太陽光に照らされてポロシャツの襟を正されながら照れ笑いするシルヴァン からのジャケットのシーン、もうそこだけで胸がいっぱいになっちゃった 善良な非モテと善良なモテとのコミュニケーションって痛々しさと切なさと素朴な親密さに満ちててほんとうにだいすき お母さんのそっと握られた手の解きかたも優しくてとてもよかったね、ヴァカンスによるテンションの底上げがその場の円滑さの9割を支えていたとしても、残り1割が彼女とシルヴァンという2人の人間の視線を同じくしたコミュニケーションに依っているなんてそれだけで奇跡みたいに素晴らしいと思う

娘が訪ねてくる夜の緊張と緩和のバランスもほんとに素晴らしい 砂糖とホイップのたっぷりかかった苺、わたしはその苺を差し出してほしくて生きてるようなものなんですけど??と泣いてしまった ボブディランとイージーライダーのポスターの貼られた女っ気のない部屋 他者からの承認を必要としていない男くさくて雑多で孤独な部屋 非日常を求めて訪れた街でこんな私的な日常に触れさせてもらってお手本のない(雑誌に載ってない)その場限りのおもてなしをされたらもうそれだけで天国に行けちゃう気がする でも彼女はバカンスに来ているだけの異邦人だから真っ直ぐに電車で帰っていく 58分しかないなんて信じられない、映画にほしいものがぎうぎうに詰まってた
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