Nasagi

もうひとりの息子のNasagiのレビュー・感想・評価

もうひとりの息子(2012年製作の映画)
3.0
イスラエル人とパレスチナ人の子どもが出生時に病院のミスで取り違えられてしまい、それぞれもう一方の家庭で育てられてしまったら…という設定の話。

「ユダヤ人とはだれか?」問題
イスラエル国籍の2割はアラブ(パレスチナ)人で、またそれ以外にアラブ系のユダヤ人もいるというイスラエルの人種的・民族的な多様性。兵役を経験しないと一人前になれないという負い目。
ちょっと前に岩波新書の『イスラエル』を読んでいたのでここらへんは興味深く観られた。
子どもが取り違えられて育てられても血液検査をするまで誰も気づかないということ、そしてひとたび自民族の子ではないと分かった途端に溝ができてしまうこと、そのアンビバレントさ。政治による恣意的なパレスチナ人/イスラエル人の分断以上に、両者の距離はじつは近いのではないかと問いかけている。

テーマ的には良いのだが、どうも登場人物のセリフの言わされてる感、行動のやらされてる感が強く、あまり良い作品と思えなかった。
また、イスラエルの占領政策に対する批判意識はそれなりに見受けられたものの、個人的に不十分におもった。
「どっちもどっちだよね」「お互い正義があるよね」的な中途半端な立ち位置ではないかと。自分もここ何か月かちょくちょくパレスチナ問題について勉強しているが、最初の方にイラン・パペとか読んだこともあってどうしてもイスラエルには批判的な見方をしてしまう。
もちろんたかだか数冊本を読んだくらいで、この複雑な問題を分かった気になってはいけないと思うが、ふつうに「和解」してもパレスチナ側には不利・不公正な結果しか待っていないだろうな、というのが現時点での理解である。
Nasagi

Nasagi