ギーコ

もうひとりの息子のギーコのレビュー・感想・評価

もうひとりの息子(2012年製作の映画)
4.5
イスラエル、パレスチナ問題を家族という縮図に収めたような作品。

対立するイスラエル人とパレスチナ人の子供の取り違えから始まり、ユダヤ人、アラブ人の宗教、政治的問題と当人たちと家族の葛藤が丁寧に繊細に描かれていた。

取り違えられたヨセフとヤシンがパレスチナとイスラエルをお互いに行き来し分離壁の向こうを知っていく中でアイデンティティを確立させていく。

印象的だったのは、両家がヨセフの家で対面する際に妹同士はすぐに手を繋ぎ一緒に遊び始める。子供たちは宗教や政治的背景なんぞは気にせずお互いが一個人として認め合えており本来はこうあるべきなんだよなと考えさせられる。

また始めは罵りあっていた父親同士が何も話さないのだけど同じテーブルで珈琲を飲むシーンはグッと来るものがあった。

ヤシンの兄が弟がイスラエル人と知った途端に弟ではなく敵だと喚き怒りをぶつけていたが徐々に気持ちが解れて行き分離壁の向こうへ行ってみたいという兄の気持ちの移り変わりは見事なもので変化を受け入れる事ができる若者として描かれる。
ラストの方での病院のシーンではパレスチナ人、イスラエル人なんてものはそこには存在せずただの兄弟のようにお互いがお互いを想い合っているのがよく分かる。

イスラエルパレスチナに限らず宗教、政治、人種、様々な偏見に括らずお互いが歩み寄り認め合う事が出来る世界でありたいという希望に溢れた映画。

今の状勢を見ると涙が出ます。
ギーコ

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