千年女優

愛のコリーダの千年女優のレビュー・感想・評価

愛のコリーダ(1976年製作の映画)
5.0
二・二六事件勃発で戦争の足音迫る昭和11年の日本。芸者や娼婦として各地を転々とした末に東京は中野の料亭「吉田屋」に行き着いた女中で、店の主である吉蔵と人目を避けて密会しては日夜を問わず情事に及ぶ阿部定。激しく求めあうがあまり徐々にエスカレートする性行為が、遂には世間を震撼させる事件に至る様を描いた恋愛映画です。

反体制的な作風で松竹ヌーヴェルヴァーグの旗手として名を馳せた大島渚がポルノを解禁したフランスのオファーを受けて『阿部定事件』を映画化した1974年公開の作品で、逆輸入を用いた過激な性描写が芸術かわいせつかの大激論を醸して日本では大幅な修正を施して上映。2000年にようやくノーカットの完全版がリバイバル上映されました。

性行為を扱う=ポルノの図式が定着し、それ以外から性行為を排除する潔癖主義進む日本。芸術が「人」を描くと言うなら果たしてその形は正しいのか。それは愛情表現の究極がセックスで終いかと同じ命題であり、方向違えど死に向かう軍兵が抱くものもまたそうです。他がやらぬなら俺がまとめて引き受ける。大島渚の気概溢れる一作です。
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