天豆てんまめ

ワイルド・スピード EURO MISSIONの天豆てんまめのレビュー・感想・評価

3.9
シリーズ化にありがちなマンネリに陥らず、毎回、限界突破するワイスピは本当に凄いと思う。

本作はシリーズの中でラブストーリーの要素が強く、そこが魅力を高めていると思う。

同時にシリーズを追うごとに、アクションがど派手になっていくけど、戦車に飛行機に、もはやカーアクションの域を超えているけど面白い。戦車が次々に車を踏み潰す迫力。前作の金庫カーアクションを凌ぐ重量感。毎回、大破する車の数も増えている気がする。

そして今回は、男対男、女対女の肉弾戦もビシビシをこちらに響いてくる。本作以降、もはや何でもありになってきたが、シリーズを追うごとに迫力も人気もこクオリティも上がっていく稀有なシリーズであることに間違いないと思う。

今回の敵役のショウ演じたルーク・エヴァンスがかっこいい。いかにも元軍人らしさと切れ者な感じが伝わってくる。最初、運転してたのはバットモービルっぽくてかっこよかった。

今回の物語はヴィン・ディーゼル扮するドミニクとミシェル・ロドリゲス扮するレティの再会が肝だけど、2人のカーチェイスのつばぜり合いで何かを感じ合うシーンもいいし、怒濤の戦車シークエンスの果てにドミニクが身を張って、レティをダイビングキャッチする場面も凄い。記憶が戻らなくとも、深い愛情を受け止めていくレティの変化がよかった。

ヴィン・ディーゼルとドウェイン・ジョンソンとタッグを組んで巨漢の男を倒すシーン(最後はラリアット!)や2回にわたるミシェル・ロドリゲスと女ドウェイン的な元格闘家ジーナ・カローラの女同士の肉弾戦も迫力あるし、いつもに増して、ガチンコバトルが多い。カンフー男と闘ったハンとローマンが2人がかりで負けてしまうのも面白い。

しかしなんといってもハンとガル・ギャドット扮するジゼルの切ないクライマックス、、、そして4,5,6作がトリロジー的に繋がって、3に繋がるラストシークエンスは唸らざるを得ない。劇場で観ていて、彼が出てきた時は次作が楽しみで仕方なかった。

インタビューでもジャスティン・リン監督が「3」に参加してから、物語と人物のバックストーリーを奥行き深く再構築したことを語っているが、そこにプロデューサーでもあるヴィン・ディーゼルとキャラクターひとりひとりに愛情を尽くして紡ぎあげた功績はとてつもなく大きい。若者のカーチェイス映画という狭い括りで始まった「1」から今や神話性まで漂わせる傑作シリーズとなった。

ポール・ウォーカー扮するブライアンもお父さんになって、明らかに価値観が変わってくる。

元々ロス市警だった彼がFBIに移り、その後逃亡の身となって、シリーズを通して状況も一番変化しているのが彼。

やんちゃで向こう見ずな若者だった彼が、ミアと再会し、恋に落ち、子供が生まれ、ひと時の自由を味わうが、逃亡者だからこそ、どこか心に収まりがついていない。

そんな彼の繊細な葛藤もこの作品では伝わってくる。観るたびに、その後の彼の不在に切なさが増すのだが......

とにかくここまで多くのキャラクターの良さを引き出しながらをアクションとドラマを形成する脚本は素晴らしい。

ダイナミックさと繊細なヒューマンドラマが高次元で共存しているこのシリーズは、完結のころには、他作品では追随できない伝説であり神話が完成するのであろう。