◆あらすじ◆
高校教師のキム・ソッコは昔から数学に没頭して生きてきた。ある日、隣室に住むファソンとその姪のユナのもとに、ファソンの元夫が現れて暴力をふるう。それに耐え兼ねてファソンは元夫を絞殺し、ユナもその手助けをしてしまう。そのことを知ったソッコは持ち前の天才的頭脳を駆使して2人にアリバイ工作を行う。
◆感想◆
原作小説「容疑者Xの献身」(東野圭吾・著)の韓国版の作品となっています。日本版の同タイトル作品は鑑賞済みです。
ストーリー、キャラクターとも上質にまとめられたミステリーサスペンス作品となっており、一途で私欲の無いソッコの天才的なアリバイ工作と不安と信頼の間で揺れるファソンの想いが丁寧に描かれています。
キム・ソッコ(リュ・スンボム)は数学の天才ですが、冴えない高校教師として日常を過ごしており、隣室のファソンに密かに思いを寄せる人物として描かれています。地味で冴えない外貌の彼ですが、その思いの一途さが悲痛なくらい伝わってきて心を揺り動かされました。
ソッコの隣室に引っ越してきたファソン(イ・ヨウォン)は快活で気持ちの良い性格の持ち主であり、ソッコが心を惹かれるのも納得できる人物でした。姪のユナを懸命に育てる姿も印象的でした。
本作はファソンの元夫がファソンのもとに訪れて暴力をふるったことから事件が発生します。ファソンの心が不安に支配される中、ソッコは2人を守ると誓ってアリバイ工作を行います。このアリバイ工作の巧みさはファソンとユナにも分からないものになっていてソッコの天才たるゆえんが見えて面白く感じました。
そして、後半になるとソッコは観ている側も騙されてしまうくらい巧妙な工作を仕掛けてきます。ソッコの自らを犠牲にする心情は常人には遠く及ばない範疇にあり、本作を特別な作品に仕上げているように感じました。
一方、事件を捜査する刑事の中に、ソッコの旧友のミンボム(チョ・ジヌン)が居てファソンを執拗なまでに追及していきます。本作においてはソッコのアリバイ工作の障害であるとともにその工作の謎を解く人物として上手く機能していました。日本版だと湯川教授に当たるキャラクターですが、無理に湯川教授のような特殊なキャラクターを作らずに刑事という無難な配役に代替したことでソッコが主人公としてスポットが当たっていて良かったと思います。
日本版とほぼ同じストーリー構成の作品であり、その優れたストーリーとキャラクターは日本版に勝るとも劣らない作品だと思います。とても面白い作品でした。
鑑賞日:2024年1月17日
鑑賞方法:Amazon Prime Video