このレビューはネタバレを含みます
彼自身の不幸な生い立ちだけは本物で、それに直接触れることで、欠如した空白を取り戻した人間の無垢な愛を肌で感じてしまい、憎むはずの相手に同情を覚えてしまうというアンビバレントな感情に胸を痛める。
かりそめだとしても大切なものを手に入れてしまったからこそ重く伸し掛る過去の過ち。
しかし、その過ちがなければ、孤独に悶える彼の心は生涯として埋まることがなかったというのが更なる皮肉。
中盤に死を切望する債務者が階段を上り、生にしがみつく債権者が階段を下るという対比的なショットがあったが、自ら生を断ち切ることを選択したガンドは最期に何を思ったのだろうか。
血を引きながら進み続けるトラックの残像が目に張り付いていつまでも離れない。
「マッチスティックメン」や「鑑定士と顔のない依頼人」のような単なる視聴者の裏をかくだけのどんでん返し映画を撮ってる人はこういうのを見習ってほしい。