もめん豆腐

失楽園のもめん豆腐のネタバレレビュー・内容・結末

失楽園(1997年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

濡れ落ち葉にすらなれない、家庭にも職場にも居場所のない男目線で、自ら考え主張もする意欲もなくただ男の性のはけ口にされていることにすら気づかない足りない女を、純文学を気どって書かれた本が原作の映画。渡辺淳一作品は『雲の階段』は佳い本だったけど、ここらへんからエロがひどくなっていった。男に都合のいい女しか出てこない。
ここでエロとエロスについて個人的にぶちまける。この人は直接的な表現でしか性を描かない。例えば愛撫やオーガズムあたりね。でもエロスは違うんだよ。以下敬称略。谷崎潤一郎や吉行淳之介は性愛を書いていてもこんなに直接的な表現をしない。読む者の想像力を掻き立てる描き方をしていて、こちらはエロではない、エロスだ。渡辺氏は性欲を持て余している中年男の悲哀にしか目線がなく、それに都合よく頭の悪い女が呼応し、気持ち悪い。新しさもない。奥村チヨの恋の奴隷じゃないんだからさー。
これが流行ったのはまだ実家に住んでいた時で、とっていた新聞が日経新聞だったこともあり話は少しだけ知ってた。ただ、展開が阿部定を気どって合体心中に話が進んだのを目にしてから「この人頭がおかしいのか?」しか思わなくなった。完全にエロ小説で情緒もクソもあったもんじゃない。こんなのが当時の中年に受けてたのよね。へんなオッサン多かったよな〜。昭和女のあてくしさえ、今の時代方が良い。セクハラもパワハラもモラハラもタバコもなくなれ!
久木は左遷に次ぐ左遷で、もはやギャグ。こんな男に心中を持ちかけられるのも屈辱なのに、合体(!)心中を持ちかけられたらぶっ飛ばすよ。そして連載当時から思っていたのは、こんな状態の遺体を見てしまった人があまりにも気の毒じゃない?ってこと。ラストに検死結果が映し出された時はしばらく笑った。それはロマンチックではなく、末代まで続く恥だよ。本人たちは死んだら知らんこっちゃだろうけど残された元家族たちの行き場のない感情に思いを馳せるのだった。そして森田芳光監督のセンスは好きではない。
唯一の救いは久木の妻が賢いところ。星野知子さんをあてたのはグッジョブ。
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