生きねば。
強い言葉だ。コロナ禍の今となって言葉の重みが遥かに増している。
宮崎駿監督の照らいの無い、ひねりの無い、真っ直ぐな夢物語とラブストーリーが劇場公開時に観た時にそのまま心にすっと入った。
二郎にとって夢の権化が、飛行機の設計家・カプローニ伯爵。
二郎にとって愛の権化が、少年時代に出逢い、後に妻になる菜穂子。
昭和初期の原風景の美しさ。関東大震災のうねるような恐ろしさ。
何年もかけて丹念に綴ったアニメーション描写を一枚一枚味わうといった感じ。
そしてユーミンの「ひこうき雲」が流れれば、新緑が風になびく風景が広がる。
庵野監督の棒読み台詞はナレーションのようにいつか自然に溶け込んだ😅
夢に見た理想だけを見て、仕事に打ち込む。打ち込む。打ち込む。挫折する。また打ち込む。そして完成した理想は戦争に利用される矛盾。やりきれなさ。
しかし身命を賭して仕事に打ち込む姿に一切の偽りはなく哀しくも美しい。
夢の途上に愛を育むが菜穂子は結核に。
何のひねりも無いこのベタな展開が不思議と体内に清涼飲料水のようにサラサラと流れていく。
二郎の願い。菜穂子の願い。2人の願いを心ながらに応援する。
二郎が仕事に忙しく見舞いに行けずにいると菜穂子は病院を抜け出して訪れる。
菜穂子と結婚して日々を共に過ごす決意する。ささやかな生活。展開がクサくても懐かしい感触。
夢の理想の実現と菜穂子の最期が重なり合う表裏へのカウントダウンを、わかりきっている展開をただ眺める。
宮崎駿監督が子供向けではなく自分自身に対して、剥き出しに余すところなく捧げたようなロマンティシズム。私はとっても清々しく受け止めた。
ナイスキャッチ!という菜穂子の声が聴こえた気がした😌