千年女優

風立ちぬの千年女優のレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
4.0
裕福な家庭に生まれ育った飛行機に憧れるマイペースな青年で、東京帝国大学進学で上京する際に発生した関東大震災から汽車に乗り合わせた里見菜穂子と女中の絹を助けた堀越二郎。大学卒業後に三菱に就職して飛行機開発に入れ込む彼が、世界大戦の激動の中で体験する同僚の本庄らとの零戦開発や菜穂子との再会を描いたアニメ映画です。

『借りぐらしのアリエッティ』『コクリコ坂から』と後進に監督を委ねた宮崎駿が自身の手による連載漫画を鈴木敏夫の勧めで映画化した作品で、実在の設計士である堀越二郎と作家の堀辰雄をモデルに「戦闘機マニアの反戦家」の立場から太平洋戦争を描き、愛弟子・庵野秀明の声優登用も話題を集めて120億円超の興行収入を記録しました。

監督作では初めてファンタジーから距離を置いた作品で、これまでも端々で言及した「戦争」を自らの主題「呪われた夢」を追う者が成果も愛をも手にしながら最後に失う姿で綴ります。夢追い人の高慢と高揚が周囲や国を巻き込む様に監督の選ばれし者が持つ気高き驕りを投影し、それでも生つまりは人を諦めきれぬ切実を吐露する一作です。
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