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戦争と一人の女のパンのレビュー・感想・評価

戦争と一人の女(2012年製作の映画)
4.1
中々尖った題材で最後まで見入ってしまった。
輪姦シーンとか人間のダークな部分を描いてて良かった。

この映画は昭和の強姦魔、小平義雄を参考にした人物が登場する。
この小平という男について簡単に説明すると元日本兵で戦時中に散々"敵の女"を凌辱してきた人間だ。
つまり強姦中毒になって平時にもやってしまったということだろう。

本人の予審調書によれば「上海事変当時、太沽では強姦のちょっとすごいことをやりました。仲間4、5人で支那人の民家へ行って父親を縛りあげて、戸棚の中へ入れちまって、姑娘を出せといって出させます。それから関係して真珠を取ってきてしまうんです。強盗強姦は日本軍隊のつきものですよ。銃剣で突き刺したり、妊娠している女を銃剣で刺して子供を出したりしました。私も5、6人はやっています。わしも相当残酷なことをしたもんです。」 Wikipediaより抜粋。

まあ平和な世の中でも自国民同士ですら毎日のように性犯罪が起きるのだから戦争のどさくさに紛れてこういうことする兵隊は絶対にいただろうな。
どうせ殺すんだからレイプしてから殺そうということだろう。
警察とか法律が戦場ではちゃんと機能しないからね。
一応国際法とか陸軍刑法はあるけど平時と違って犯罪の証明があまりにも難しい。DNA鑑定も監視カメラもない時代だ。
憲兵がいるのも都市とか基地内であって、中国戦において実際はほとんど機能してなかった。
田舎のほうなんて匪賊の討伐と称してやりたい放題してたそうだ。
地方は慰安所すらないものね。
このあたりの話に興味がある人は元日本兵の本とかを読んでみると良いと思う。

三光作戦についても触れててわざわざ「日本側では燼滅作戦と呼んだ」と戦史に詳しくないと知らないような解説まで入る丁寧っぷり。
中々気合の入った左翼映画だ。

さて、本編について話そう。
江口のりこ、永瀬正敏の二人の演技は自然で芝居臭さがない。
この映画の場合これが正解だろう。
ただ会話とかやってる内容はあまり褒められたものではない。
アングラに理解がない人はひたすら不愉快に思うかもしれない。まあ人と観るような映画ではないと思う。

村上淳の強姦魔としての演技が抜群だった。
この映画で一番光ってたし狂気に満ちてたな。
日本映画はこういう素晴らしい役者たちが支えてると思う。
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