馮美梅

愛のゆくえ(仮)の馮美梅のレビュー・感想・評価

愛のゆくえ(仮)(2012年製作の映画)
3.0
前回の「へばの」では「恋の予感」そして今回の作品では「グッバイ・マイ・ラブ」という曲の選択が木村監督らしいというかこの作品のタイトル「愛のゆくえ(仮)」にふさわしい感じがしました。

主人公の男性が警察に自主する前日から当日の物語なんだけど、人の記憶の曖昧さや同じ物を見て同じ場所に存在していてもそれぞれ感じ方は違うし、そういうものを磨り合わせて行く描写の中でカレーを作ったり、洗濯をしたりしながら一見、取り留めない会話が展開されていく。

男がリンゴをむきながら女と会話するシーン。
男の姿は直接的には画面からは見えていないので女性に視線が行くんだけど、実は女のそばにある姿見には男の姿が映っているという小憎らしい演出。

覚悟を決めて警察に向かう男の極度の緊張感。電車の中で緊張感が見ててハラハラしました。作品をあえてカラーで見せず、セピアカラーなのが長い年月、社会と隔絶していた2人の心情を表現しているように感じました。

世間から忘れられたいと思いつつ、3.11の震災以降何かが自分の中で変わっていった2人の未来が、あるのかないのかわからない、でもどちらにしても今までと違う何かが始まる予感が(仮)なのかもしれない。
馮美梅

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